京都大学は、圧力や温度の変化を利用し、細胞サイズの人工脂質膜小胞を可逆的に繰り返し変形させることに成功した。分子で作ったマイクロメーターサイズのロボットが、タンパク質などの身近な分子を用いて実現可能なことを実証した。
京都大学は2016年4月19日、圧力や温度の変化を利用し、細胞サイズの人工脂質膜小胞を可逆的に繰り返し変形させることに成功したと発表した。同大学物質−細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)の西山雅祥特定准教授(白眉センター特定准教授)らの研究グループによるもので、成果は同年3月29日に、全米化学会発行の「Langmuir」誌の電子速報版に掲載された。
現在、複雑な分子ロボットを創製する方法論の一環として、細胞骨格と分子モーターを細胞サイズの人工脂質膜小胞内に再構成した第1世代の分子ロボットを開発する研究が行われている。しかし、これまで開発された分子ロボットは、細胞に見られるような自律的な運動はできず、一連の動作を1回だけ行える単純なものだった。
同研究グループは、細胞サイズの人工脂質膜小胞の内部に細胞骨格を再構成した、第1世代の分子ロボットの研究を行った。その結果、生物から単離精製したタンパク質チューブリンを細胞と同じ大きさの膜小胞内に封じ込め、小胞の外部から実験系の圧力を操作することで、チューブリンから微小管への重合反応と、その逆反応である微小管からチューブリンへの脱重合反応を繰り返し起こすことに成功した。
同成果は、分子からマイクロメーターサイズのロボットを構築し、運動させるための方法論を確立する上で、重要な1歩になるという。さらに、タンパク質やリン脂質などの身近な分子を用いて、可逆的に繰り返して行える変形が実現可能であることを実証した。今後、同成果を利用することで、細胞を模倣したマイクロメーターサイズの分子ロボットの構築が期待できるとしている。
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