京都大学 宇宙総合学研究ユニットの特任教授でありユビテック顧問も務める荻野司氏が、東アジア最大となる口径3.8mの光学赤外線望遠鏡の開発プロジェクトについて語った。同望遠鏡の開発には、日本発のさまざまな技術が利用されているという。
京都大学とブロードバンドタワーは2015年3月3日、東京都内で宇宙関連事業に関するセミナー「宇宙の科学、工学、政策の最前線」を開催した。その特別講演で、京都大学 宇宙総合学研究ユニットの特任教授でありユビテック顧問も務める荻野司氏が、東アジア最大となる口径3.8mの光学赤外線望遠鏡の開発プロジェクトについて語った。高精度な天体観測が可能になるとして、その完成が期待されている同望遠鏡には、日本が生んださまざまな最先端技術が投入されているという。
現在、東アジアには口径2.5m以上の光学赤外線望遠鏡は存在していない。そのため同地域では、星の爆発といった突発的な天体現象を詳細に観測することは難しかった。しかし、もし日本から宇宙における爆発現象の1つであるガンマ線バーストなどを詳細に観測できれば、いまだ解明されていない宇宙現象が明らかになる可能性も生まれる。そこで2006年に、日本国内にこうした詳細な観測が可能となる東アジア最大の口径3.8mの光学赤外線望遠鏡を建設しようというプロジェクトがスタートした。
同プロジェクトは、京都大学、名古屋大学、国立天文台および資金提供を行うナノオプトニクス研究所によって行われている。こうしたプロジェクトが民間資金で運営されることは珍しいという。開発中の天体望遠鏡は、岡山県浅口市に位置する国立天文台 岡山天体物理観測所の隣接地に建設が予定されている。
直径3.8mの鏡を備え、高さと幅が約8m、総重量は約20トンというこの大型の天体望遠鏡は、先述した通り日本はもちろん東アジアにも存在しない。つまり、これまで日本国内では作られたことがない無い規模の天体望遠鏡であり、そのために新たな技術を開発する必要があった。荻野氏は「このプロジェクトは単に天体望遠鏡を開発するだけではなく、そのために必要な技術そのものを新たに開発するという、挑戦としかいいようがないものだった」と語る。
今回の天体望遠鏡の開発において必要となった新技術は3つある。1つ目が超高精度な分割鏡の製造技術だ。100億光年以上も離れた天体を観測するこの天体望遠鏡において、光を集める役割を担う鏡は中枢を担う重要な部品である。2つ目が、観測状況に合わせて複数の分割鏡を高精度に制御する技術だ。そして、分割鏡を搭載した望遠鏡のシステム全体が天体を高速かつ正確に追えるようにするための、軽量かつ高剛性な架台の製造が3つ目の技術的なポイントとなった。
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