現行のドアミラーをカメラに置き換えて視認性の向上を図るというもの。これまでにモーターショーのコンセプトカーなどではさまざまなメーカーが取り入れているが、量産車への展開が進まないのは、現状では鏡を使わない後方確認の方式を認める法規を持つ国がないからである。日本国内でいうと、ドアミラーを外してカメラに置き換えたクルマでは、鏡を使ったドアミラーより視認性などの機能性が高まっていたとしても車検に通らないので、公道を走ることができない。筆者自身も以前に、左右両サイドとリヤ(インナーミラーの代わり)のカメラシステムの開発プロジェクトに関わったことがあるが、その際は苦肉の対応としてドアミラーの鏡の一部を素通しにしてカメラをドアミラー筐体に組み込むという手法を採った。
Valeo(ヴァレオ)のブースで話を伺うと、各国において法整備の検討は進んでおり、2016年あたりから欧州ではカメラ解禁という環境が整いそうだということだった。そういったシステムが普及すれば、車両の外観とともにインパネの形状も変化してきそうである。
小糸製作所ブースではLEDに次ぐ次世代の光源としてレーザーを使ったものが紹介されていた。
また、ヘッドランプユニットがずらりと並ぶと、LEDになってから随分とランプユニットは小さくなったとあらためて思う。
最近のエンジンヘッドカバーは樹脂製のものが多いが、新型「マツダ ロードスター(NDロードスター)」は、従来通りのアルミ製のヘッドカバーを装着している。ロードスターのユーザーは自分の好みに応じてクルマをカスタマイズをする人も多く、エンジンルームでも初代「NA」や2代目「NB」ではヘッドカバーを塗装したり、磨いてポリッシュ仕上げにしたりして楽しむユーザーがいた。前モデル「NC」では樹脂カバーの普通のエンジンとなっていたが、新しい「NDロードスター」でアルミのヘッドカバーを与えたことは、NA/NBと同様にユーザーがひと手間加える余地としてのメッセージのようだ。
今回の記事で取り上げたものは、人とくるまのテクノロジー展のほんの一部でしかない。実際の展示会場では、ハイブリッド車や電気自動車の開発に関する技術、計測や評価のためのソリューションなど、クルマの開発に必要なさまざまな分野の要素技術が展示されている。これらの要素技術を組み合わせて、クルマとなったときの価値をどのように組み立てていくのか。今年(2015年)は「東京モーターショー」も開催される年である。要素技術の次はモーターショーでクルマの動向を眺めていきたい。
林田浩一(はやしだ こういち)
デザインディレクター/プロダクトデザイナー。自動車メーカーでのデザイナー、コンサルティング会社でのマーケティングコンサルタントなどを経て、2005年よりデザイナーとしてのモノづくり、企業がデザインを使いこなす視点からの商品開発、事業戦略支援、新規事業開発支援などの領域で活動中。ときにはデザイナーだったり、ときはコンサルタントだったり……基本的に黒子。2010年には異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。最近は中小企業が受託開発から自社オリジナル商品を自主開発していく、新規事業立上げ支援の業務なども増えている。ウェブサイト/ブログなどでも情報を発信中。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.