担当編集が「あのクルマはかわいくない! 別の自動車メーカーの女性向けはちゃんとかわいいのに!」と騒ぐので、「かわいい」と「かわいくない」の違いがどこから来るのか、実車を見ながら考察した。
今回の題材は、先ごろ発売されたダイハツ工業の「ムーヴ キャンバス」である。個人的にはまた派生車種が1つ増えたなぁという程度の認識だったが、本連載の編集担当者(女性)が「今度出たムーヴ キャンバス、かわいくないんですよ! スズキのラパンはカワイイのに」というので、「では、見てみましょうか」となった次第である。なんでも、新型車発表会の会場で隣り合わせた他のメディアの女性記者とも同じ意見となったのだという。
「では、見てみましょうか」と判断した背景を少し補足すると、「カワイイ」も「カワイクナイ」も個人の経験値の蓄積を背景にでてくる感情や見解なので、どちらかがカワイかろうが、どうでもいいことではある。しかし、ムーヴ キャンバスとラパンで「カワイイ」と「カワイクナイ」の違いがどこからくるのか見てみるのは面白いかもと思った次第だ。
今回は、ムーヴ キャンバスに数時間試乗できる機会があるというので、その場にスズキの「アルト ラパン」も用意してもらい、見較べてみた。
それぞれのクルマを順に眺めてみる。まずはムーヴ キャンバスから。ダイハツ工業によると、ムーヴ キャンバスが生まれた背景には、女性向けモデルの鮮度低下があるのだという。
同社の軽自動車ラインアップの中で女性を対象とした「ムーヴ コンテ」「ミラ ココア」のモデルライフが長くなっているため、意匠や機能で差別化し、トレンドを捉えた新商品が必要と判断した。モデルの鮮度低下により、未婚女性層のユーザーシェアは低下してきていた。また、世の中の傾向として、晩婚化/未婚化が進む女性とその親世代に注目したという。
このような中から描き出されたユーザー像の、以下のような特徴にダイハツ工業は注目した。
こうした要素を背景に作られたムーヴ キャンバスは、「ムーヴ」に近い全高ながら両側スライドドアを備えるパッケージとなっている。クルマの成り立ちとしては、「タント」のプラットフォームを使うことで両側スライドドアを実現しているという。「ムーヴ」と名前が付いているけれど、タントの派生車という感じだ。
実車を見る前にここまでのプレゼンテーションを聞いていて「はて? 独身女性のライフスタイルに“刺さる”ためには、スライドドアはそんなに重要なのだろうか?」というのが引っ掛かったところだった。
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