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» 2016年11月07日 06時00分 公開

「かわいい」と「かわいくない」、クルマの印象の違いはどこからくるのかクルマから見るデザインの真価(12)(3/4 ページ)

[林田浩一/林田浩一事務所,MONOist]

想定ユーザーにとって本当に重要? 後部座席の広さ

 想定ユーザーの人たちにとって「後ろにこんなに広い空間があることは重要なのだろうか?」というのが、また次に浮かんだ疑問だ。しかし、見方を変えて「世帯内の共有車」という性格を考えると、パーソナル感というよりもリビングのような雰囲気の空間構成というのは悪くないと思う。

 ムーヴ キャンバスはじっくりと見ていくほどに、タントやムーヴを検討する人たちが、カタチや雰囲気の好みなどから選ばれる選択肢の1つなのではないかと思えてくる。ムーヴ キャンバスに乗りつつ、プレゼンテーションの中で描かれたユーザーとのマッチングを考えていると、同じダイハツ工業の軽自動車でも「キャスト スタイル」の方がより“らしい”かなと思い浮かんだ。

 ムーヴ キャンバス、「未婚女性のライフスタイルへの価値訴求において、スライドドアであることは最優先に近いのだろうか?」ということを考えていると、子育て世帯の便利ツールを売りにするタントほどスッキリと納得できないままなのである。

 メーカーが主張する想定ユーザーと目の前のクルマとの関係性についてはしっくりこないところもあるけれど、ムーヴ キャンバスというクルマそのものについては、既に色々な軽自動車が出ている中で、新しいニッチな落としどころを作ってきたなぁと思う。これまでのハイトワゴン系の軽自動車では、使い勝手面での利便性への訴求が強かったのに対し、タントの様なスライドドア付の軽自動車に遊び心の雰囲気も欲しいという人たちにはムーヴ キャンバスは響きそうだ。

 既に様々な自動車メディアで書かれている2トーンカラーによる『ワーゲンバスのような』という雰囲気の演出も、“本家”と較べるとミニチュアのようなサイズだから成り立つ遊びではある(ただ個人的には、自社ブランドの歴史からの引用ではないパロディにも近い『遊び』は、アフターマーケットのものだったのになぁという気持ちもあるが)。

 クルマの方からユーザー像をイメージしてみて、「タントから『ママのための便利なクルマ』という訴求要素を無くして、心や感性面に訴求する要素に焦点を当てていく、というあたりが企画のスタートだったのでは……と考えてみると、ムーヴ キャンバスの立ち位置が個人的にはしっくりとくる。

 半年後や1年後、新車効果が落ち着いた時点でのユーザー構成がどのようになっているか興味あるところだ。

ラパンがやったカワイイの演出

 次にラパンの方を見てみる。こちらは、背も低く軽自動車でないコンパクトカーと同じ2ボックススタイルを採用している。ムーヴ キャンバスと並べると、車高が低い分より小さく見えることもあり、個人のクルマという感じはラパンの方が強い。

 インテリアも、ライフスタイルを豊かにする「身近な雑貨や家具のような愛着の持てる道具」(スズキ)とうたうように、テーブルの上にタブレット(のような車載情報機器)が載ったような造形のインパネであるとか、キルティング風のダイヤ柄で模様を入れたシートやルーフライニングの表皮など、1つ1つの要素を目に付くようにすることで、より「居心地のいいワタシの部屋」といった感じを印象づけようとしている。

ルーフライニング運転席後部座席 ルーフライニングの表皮はキルティング風。運転席と同じデザインで後部座席も統一されている(クリックして拡大)

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