構造不況に陥る日系造船業は未来をどう切り開くべきか再生請負人が見る製造業(7)(4/4 ページ)

» 2015年05月01日 13時00分 公開
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競合と協業する「仕組み」作りへ

 国内造船業で、足元の競争力回復が円高の是正に依拠していることに考えると、今後の為替変動に耐えるために少なくとも5〜10%程度の営業利益率改善を目指すべきである。中国・韓国においては造船会社の淘汰・集約が進んでおり、1社当たりの事業規模が拡大している。そのため、コスト競争力が向上する可能性があることを加味すると、中期的にはさらに5%程度の営業利益率改善を目指すことが必要となる。

 造船各社はこれまでもコスト削減を実施してきているため「国内サプライヤに対する単価削減依頼」だけでは目標を達成できない。調達する材料仕様の最適化・LCCサプライヤとの直接交渉などの追加的コスト削減施策や、海外・競合他社を巻き込んだ大胆な取組みを推進していくことが不可避となっている。

 このためには、顧客との交渉に備えた部門横断チームの運営、曖昧だった仕様の定義・定量化、競合他社を含めた意思決定方法・利益分配ルールの定義などを行わなくてはならない。特定部門や個別会社を超えて迅速に意思決定をし、着実に施策を実行していくための「仕組み(経営インフラ)」の構築が必要となる。

 競合や先進事例をベンチマークし、自らの課題を浮き彫りにする。部門横断的なチームを組成し、課題解決に向けた施策の検討・実行を全社一丸となって推進する。施策の実行結果を検証し、新たな改善課題と目標とを設定する。このような従来各社が個別に実施してきた改善のサイクルを、会社という枠組みを超えた「仕組み」として構築できれば、日本の造船業は足元の厳しい競争に勝ち残ることができるはずである。

筆者プロフィル

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伊藤隆(いとう たかし)アリックスパートナーズ ディレクター

新日本製鉄、A.T.カーニーなどを経てアリックスパートナーズ入社。製造業・外食産業において、コスト削減を中心とした業績改善に多くの実績を残す他、国内中規模事業会社役員や東南アジア企業の事業再生タスクフォースチーム責任者を務めるなど、豊富な実務経験を持つ。




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