エボラや炭疽菌のワクチンも! 富士フイルムが米社買収しワクチン受託製造に参入製造マネジメントニュース

富士フイルムは、バイオ医薬品の受託製造会社(CMO)でワクチン製造に強みを持つ、Kalon Biotherapeuticsの買収を発表した。

» 2014年10月27日 17時10分 公開
[MONOist]
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 富士フイルムは2014年10月27日、富士フイルムの子会社でバイオ医薬品 受託製造会社(CMO)であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies USA(以下、FDBU)を通じて、バイオ医薬品CMOでワクチン製造に強みを持つ、Kalon Biotherapeutics(以下、Kalon)を買収することを発表した。これにより、同社はワクチンCMO市場に参入し、バイオ医薬品事業のさらなる拡大を進めていく方針だ。

 Kalonは、2011年にテキサスA&M大学によって設立された、高度な技術と最先端の設備を持つバイオ医薬品CMO。米国保健福祉省傘下の米国生物医学先端研究開発局(以下、BARDA)から、バイオテロや新型インフルエンザのパンデミックなどの非常時に公共の健康を守るための医療手段を開発・製造する重要拠点「Center For Innovation In Advanced Development and Manufacturing」(CIADM)の1つとして指定されている。

 同社の強みは、ワクチンを動物細胞培養法で製造しワクチン製造に必要なウイルスを製造工程内にとどめる高度な封じ込め技術を保有していることだ。そのため、新型インフルエンザウイルスやエボラウイルス、炭疽菌などに対するワクチンを安全かつ安定的に製造することが可能だという。

photo Kalonのモバイルクリーンルーム

 さらに同社では、ウイルスの高度な封じ込めが可能な小型で可動式のモバイルクリーンルームを完備。このモバイルクリーンルームを同社のワクチン製造施設である「National Center for Therapeutics Manufacturing」に、最大20基まで設置することができ、多品種のワクチンを同時並行で製造することが可能だとしている。同クリーンルームは、動物細胞培養法によるワクチンはもちろんのこと、抗体医薬品を含むあらゆる種類のバイオ医薬品の製造も可能で、今後高まるバイオ医薬品の多品種少量生産ニーズに応えられるメリットも持つという。

 FDBUは、2014年10月22日にKalonの持分所有者であるテキサス州およびテキサスA&M大学と、Kalon社の持分譲渡に関する契約を締結。今後、数カ月以内に決済手続きを行い、Kalonの全持分の49%を取得する。また、Kalonの取締役の過半数は富士フイルムグループから任命するとしている。

 現在、バイオ医薬品は急成長しており、医薬品市場に占める割合は今後ますます拡大すると予想。同時にバイオ医薬品CMO市場は年率約7%(富士フイルム調べ)の成長が見込まれている(関連記事:医薬品製造受託市場、新規参入が拡大し2012年3月期は9.7%増の5100億円に)。

 富士フイルムでは現在、長年の写真フィルムで培った生産技術や品質管理技術などを生かし、高品質なバイオ医薬品の効率的な生産体制構築を進めている。またエボラ出血熱対策として投与拡大が進む抗インフルエンザウイルス薬を開発するなど、バイオおよび医薬品事業の拡大に積極的に取り組んでいる(関連記事:エボラ出血熱向けの抗インフル薬、富士フイルムが追加生産を決定)。

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