ソニーは研究向けに、細胞の動きを定量評価する画像処理システムを発表した。培養状態の細胞を撮影し、その動画を独自に開発したアルゴリズムで解析する。特殊な培養容器や染色するための試薬などは不要だ。iPS細胞やES細胞を用いた再生医療や、創薬などの研究を加速することが期待できる。
ソニーは2014年9月24日、細胞の動きを非染色かつ非侵襲で定量評価する、動き検出技術を応用したセルモーションイメージングシステム「SI8000シリーズ」を発売すると発表した。創薬、個別化医療、再生医療など、細胞を含めた生体組織を対象とした研究用途に向ける(治療や診断には使用できない)。
SI8000シリーズは、ソニーがAV機器開発で培った動画像解析技術を生かして開発された製品だ。同技術を応用し、細胞の機能を評価する「細胞の動き解析アルゴリズムMotion Vector Prediction Method(MVP法)」を独自に開発、SI8000シリーズに採用した。通常の培養状態のまま細胞を撮影し、その動画をMVP法で解析する。操作は、ソフトウェアのみを使って簡単に行える。測定は、カメラでの撮影のみなので、これまで必要だった染色などの専門技術や特殊な用具/装置は不要になる。さらに、普段使用している培養プレートを顕微鏡用培養装置に設置するので、細胞培養環境を保ったまま観測が可能だ。
本システムでは、心筋細胞など、動きのある細胞において拍動伝播を可視化できる。そのため、不整脈を引き起こすような細胞間結合の異常や薬剤による影響を検証したり、ヒトiPS細胞由来の疾患モデル細胞について、その表現型を動きの観点から定量評価したりするなど、細胞評価における多くの利用シーンが想定される。非染色での細胞評価が可能なので、創薬や再生医療の研究において細胞への染色を避けたい場合に有利だ。
用途によりCardioモデルとResearchモデルの2種類を用意している。
Cardioモデルは、特に心筋細胞の収縮機能評価にフォーカスしたモデルとなる。同モデルでは自動解析により心筋収縮の詳細なパラメータを得ることが可能で、薬効や安全性評価、スクリーニングなど創薬分野における応用を狙う。
具体的には、薬剤添加による心筋細胞の拍動数や収縮速度の変化だけでなく、これまで難しいとされていた細胞の変形距離や弛緩(しかん)速度も定量評価できるという。さらに、生理的培養条件を維持した状態で1週間以上の細胞観察が可能であることから、薬物などの慢性毒性評価などにも使える。
Researchモデルは、心筋細胞の他、がんの転移に関わる細胞の遊走や浸潤、神経細胞の突起伸長など、さまざまな細胞の動き、形態変化を定量評価することが可能で、幅広い研究分野での応用が期待できるとする。さらに、染色手法と組み合わせることで細胞内小器官など特定の対象物の動きを評価することもできるので、「細胞の動き」という新たな指標を用いて、いろいろな角度から細胞機能を評価できるという。
Cardioモデルは2014年12月発売予定で、想定価格は約3000万円。Researchモデルは2015年2月の発売を予定していて、価格は約2000万円を想定している。
項目 | Cardioモデル | Researchモデル |
---|---|---|
顕微鏡 | 4x、10x、20xの位相差顕微鏡を使用 | |
光源 | 白色LED光源 | |
搭載カメラ | 150フレーム/秒(fps)、画素数は最大2048×2048ピクセル | 27fps、最大2752×2200ピクセル |
寸法・重量 | 外装部:幅700mm×高さ870mm(カバーを開けた際は1325mm)×奥行き690mm、重量50kg(顕微鏡搭載時100kg程度) | |
「SI8000シリーズ」の主な仕様 |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.