まずは、失敗コストです。社外流出コストでは、社内人員が対処に要した工数から換算されるような「人に関わる費用」は労務費あるいは人件費に埋もれがちです。ここで労務費と人件費と区分して表現しましたが、労務費は製品生産に関わった人に関わる費用のことで人件費とはそれ以外、例えば営業などに関わる費用のことです。この辺りは前回の「あの波乱の演出者!? サッカーボールで“製品原価算出の流れ”を考えてみる」で解説していますので、気になる人はぜひご覧ください。
さて、社外流出コストにおける労務費あるいは人件費以外の費用は製造原価以外の部分の「その他費用」などの名称で処理されてしまう場合が多いです。また、社内ロスコストについては、材料ロスなどモノに関わる部分は、原材料使用量や月初、月末の棚卸差異に反映される形で原価上で反映されます。一方、人に関わる部分は基本的には労務費の方に反映される場合がほとんどです。
評価コストについては、労務費や評価機器の償却費や各種経費などの中に含まれています。
予防コストの場合は、圧倒的に人に関わる費用が大きいですが、企業の組織体制や費用分類の考え方などにも影響を受けます。特に設計部門に関わる費用を製造原価として扱う場合と、管理費用とし販売費・一般管理費として扱う場合がありますが、いずれにしても労務費ならびに人件費の中に算入されることになります。
大まかな考え方としては以上のようになります。しかし、本当に品質に関わる部分に対して費やしているものかどうかを細かく原価上で表現することは非常に困難です。そのため通常はQコストとして別途管理する形になります。
失敗コストを最小にするために評価コストと予防コストを費やす必要があります。そのため、一般的にはこの3つのコストを合算したQコストはゼロにするのではなく、最小化するバランスを作り出すことが重要だといわれています。モノづくりに関わる立場からいえば、あえて検査や工数を要する設計品質保証手法を活用しなくても、失敗コストゼロの製品を設計して、失敗なく製造するQコストゼロの日本企業が出現してもらいたいと考えています。
今回は品質をコストという視点からお話を進めさせていただきました。品質問題が起こす最大の課題は、企業の信用力低下による売上高減少です。過去には品質問題が発端で倒産してしまった企業もあります。対顧客ならびに市場という意味からは、品質は単純にコストだけでは語ることはできません。企業の優劣を決定する最大の要素であるということは忘れないようにする必要があります。
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