「いまさら聞けない原価管理」として、原価管理の基礎を分かりやすく解説する本連載。3回目はサッカーボールを例として、「製品原価算出の流れ」を解説します。
4年に一度のサッカーの祭典FIFAワールドカップブラジル大会はドイツの優勝で幕を閉じました。今大会も、ネイマールやメッシといったスーパースターをはじめ多くの選手に注目が集まりましたが、実際の試合で一番の注目を集めるのは何だと思いますか?
そうです。サッカーボールです。サッカーはボールをゴールに入れるスポーツですので、ボールの動きを“見る”のは当たり前で、ちょっと引っ掛け問題みたいでしたね。
ワールドカップでは毎回異なるデザインのボールが登場します。ブラジル大会の公式球は「ブラズーカ」というボールが採用されました。サッカーボールは、見た目だけではなくキックした時の球の軌道にも影響があり、勝敗に影響を及ぼすこともあります。そういう意味では、「サッカーの主役はサッカーボール」ということもできるかもしれません。
ところで、このサッカーボール、どこで生産されているかご存じですか? 世界中のボールの70〜80%は意外にもパキスタンで生産されています。パキスタンでは、人件費が安く、衣類など人手による縫製を伴う産業が盛んです。サッカーボールも同様の流れで生産が行われているといいます。しかし、製品原価というのは人件費だけで決まるわけではありません。では、具体的に製造原価はどのように算出されるのでしょうか。今回は、製品原価算出の流れについて解説していきます。
製品原価は大きく3つの要素で構成されています。それは、「材料費」「労務費」「経費」です。経費には、外注加工費、製造設備の減価償却費、保険料、水道光熱費、旅費交通費、など多様な項目があります。また、これらの3つの要素はそれぞれ、生産対象の製品に直接的に関わっている「直接費」と、直接的な関係性が把握しにくい「間接費」に分けることができます。
直接費と間接費について、サッカーボールとバスケットボールを作っている工場を例に補足しましょう。
サッカーボールの表皮に使われる材料は、サッカーボールという対象製品と直接的に関連付けられるので直接費になります。このように費用を対象製品に直接的に割り当てることを、「費用を『賦課(ふか)』もしくは『直課(ちょっか)』する」といいます。会話の中では音的に「負荷」や「直下」と勘違いしてしまう場合も多いのでこれを機に覚えておいてもらえればと思います。これに対し、原価算出の対象製品と費用の関わりを直接的に関連付けできない費用が間接費となります。例えば、サッカーボールだけの製品製造を行っているわけではない工場長の労務費などがこれに当てはまります。この間接費も後述するように何らかの方法で製品原価に割り付けなければなりません。このことを「費用を『配賦(はいふ)』する」といいます(図1)。
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