さて、ここで原価計算の手順も追いながら間接費の配賦について説明します。分かりやすくイメージを描けるようにサッカーボールの製造原価を例とします。ここでは、サッカーボールの製造工程と、その組織を次のように仮定します。
ここで設備部は直接的にボールを製造しているわけではないので、補助部門と呼ぶこととします。なお、直接費については、「製造している製品に直接的に関わる費用を直課する」という作業で、理解しやすいと思います。ですから、ここでの製造原価計算の流れはあくまでも間接費に関わる部分の説明を行います。
まず、部門ごとに発生した費用を集計します。ここで配賦を必要とする費用として「部門共通費」というものが登場します。これは、部門に総じて発生している費用で、どこか特定の部門にだけ費用負担をさせるわけにはいかない費用のことです。例えば工場長の人件費や、工場建屋の設備償却費などがこれに当たります。
次に、この部門共通費を各部門に配賦します。各部門が「部門共通費」に含まれる各要項の使用率や貢献度などから、受け持つ比率を決めて割り振っていきます。例えば、工場長の人件費であれば、各部門の人員数や労務費比率に応じて配賦したり、建屋の減価償却費であれば各部門の使用面積比率で配賦したりします(図2)。
直接的にボール製造に関わっていない補助部門の費用も、製造部門の各部に配賦しなければなりません。ここでは、補助部門が各製造部門に提供している業務やサービスの時間や量に応じた比率で配賦します。例えば、設備関連であれば保全時間や電力消費量などが考えられます(図3)。
ここまでの作業で、ようやくサッカーボールの製造に直接関わる製造部門に、費用を集めることができました。次に製品に対しての配賦として製造部門の中の各部門で、時間当たりの費用を算出します。ここでの時間は、標準的あるいは予算計画上の作業時間などを基準とします。この時間当たりの費用を「配賦率」や「チャージ」と呼びます。これにより、製造各部門での製造時間に配賦率を掛けることで製品への配賦金額が算出できます。例えば、サッカーボール1つの各部門での製造時間がそれぞれ「裁断部 30分(0.5時間)」「縫製部 2時間」「成形部 30分(0.5時間)」だとします。この場合、サッカーボール1つ当たりの間接費は次のようになります。
裁断 : 0.5時間 × 2,000円/時間 = 1000円
縫製 : 2.0時間 × 1,500円/時間 = 3000円
成形 : 0.5時間 × 2,500円/時間 = 1250円
合計 : 5250円
間接費だけでこの価格が掛かるとするとさすがにビジネスにはならなくなるため、現実的な数字ではないことを、含んでおいてください。
(次回に続く)
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