「いまさら聞けない原価管理」として、原価管理の基礎を分かりやすく解説する本連載。4回目は「Qコスト(品質コスト)」についてどう捉えるべきか、解説します。
某国で発生した期限切れ食肉問題では「品質管理」が大きな注目を集めました。某大手ファストフード企業では、この問題が発覚した次の日に新商品の発表会を行う予定でしたが急きょ中止にしたといいます。きっと各種販促ツールのロスや会場キャンセル費用など損害金額も膨大なものであったことが想像できます。こういう事件に触れるたびに「なぜもっとちゃんと食肉業者の管理を行っていなかったのか?」という疑問が出てくるわけですが、ここにはそう簡単ではない関係性が潜んでいます。
そこで今回は、モノづくりにおける競争力の源泉である「品質」「コスト」「納期」における、「品質とコストのバランス」について考えてみることにします。
一般的に品質管理を強化するには、製品の検査項目、検査数、検査頻度を増やしたり、製造現場の監査時間を増加させるなど、管理コストの増加を伴います。一方で検査自体は製品そのものに新たな機能を付与するものではないため、どこまでコストを掛けてよいのか判断が難しいところです。品質に掛けるべきコストはなかなか“見えない”ということです。
そこで「Qコスト(品質コスト)」という概念を紹介したいと思います(図)。Qコストは、大きく分類すると「失敗コスト」「評価コスト」「予防コスト」の3つのコストから構成されています。失敗コストはさらに社外に不良品などが流出してしまう「社外流出コスト」と社内で不良品として製品化されないことにより発生する「社内ロスコスト」があります。
社外流出コストは流出した製品そのものを代替するコストはもちろん、ユーザーサイドで既に製品を使用していた場合に要している各種費用をも含めた損害賠償などが含まれます。また同様の問題が発生するリスクのある製品を回収するための費用なども社外流出コストとして捉えます。自動車メーカーにおけるリコールを思い描いていただければ、その影響する金額の大きさがイメージできると思います。
社内ロスコストについては不良による材料費の増加など、製造原価において直接的に反映される部分があります。そのため、製造原価低減活動を行っている部門であれば必ず着眼している部分です。逆説的な意味では、冒頭の期限切れ食肉問題も社内ロスコストを表面上取り繕うために行っていたといえなくもありません(関連記事:あなたが品質管理で果たすべき役割は何か)。
評価コストは製品出荷前の検査や製造途中、業者からの部品受入の検査など、製品品質を保証するために必要なコストです。製品の品質バラツキに応じて増減するコストということになります。主に品質保証部門が顧客との取り決め仕様に対し、製品品質の安定性に応じて検査・試験方法などを考案していきます。品質保証部門は顧客視点から製品品質を捉える必要がありますので、製造部門とは切り離された独立した部門であることが求められます。
予防コストとは一言でいえば、いかに製品品質を安定させるか、不具合の発生を未然に防止するかを仕組み化するためのコストです。このステップで活用される手法として「デザインレビュー」「FMEA(故障モード影響解析)」「パラメーター設計」などがあります。
ここまで、Qコストに含まれる、失敗コスト、評価コスト、予防コストについて説明しましたが、次に原価管理との関連性を見てみましょう。
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