サプライチェーンの問題に多くの製造業が振り回される中、SCMシステムでもさらなる進化が求められている。そのカギを握るポイントの1つであるAIについて、Blue Yonder 最高イノベーション責任者のアンドレア・モーガン-ヴァンドーム氏に話を聞いた。
地政学的問題や環境問題など、製造業ではサプライチェーン管理において考慮すべき観点が増え、これらの管理システムにも新たな進化が求められている。その中で、今後SCM(サプライチェーンマネジメント)システムの新たなポイントとなりそうなのが「AI(人工知能)技術の活用」と「環境問題への対応」だ。今回は前後編に分け、これらの2つのSCMの新たな方向性について、統合型サプライチェーンプラットフォームを展開するBlue Yonder(ブルーヨンダー)におけるキーマンのインタビューを行った。
本稿ではまず、最高イノベーション責任者(CIO)のAndrea Morgan-Vandome(アンドレア・モーガン-ヴァンドーム)氏に、AIによるSCMシステムの進化と活用のための課題について話を聞いた。
MONOist SCMシステムにおいてAIが重要な役割を果たすとされていますが、ブルーヨンダーではどのような取り組みを行っているのでしょうか。
モーガン-ヴァンドーム氏 ブルーヨンダーでは主に3つの領域でAIを活用し、SCMシステムを高度化することを目指しています。1つ目が「スマートデシジョン」です。AIによって、関わる在庫や販売などのさまざまなデータを学習させることで、最適な判断を下せるようになります。在庫効率などを高めることができ、売り上げや利益を伸ばすことができます。
2つ目が「新規ソリューションの開発」です。たくさんのデータから得られる知見がAIを活用することで簡単に引き出せるようになります。AIを活用したレコメンドや、AIエージェントによる業務支援などで、これまでの業務の在り方を変える新たなソリューションを提供できると考えています。
そして、3つ目が、これらを組み合わせた「自動化」です。サプライヤーのネットワークなども巻き込み、人が行っている作業を代替し、業務を完全に自動化できるようにすることを考えています。
MONOist SCM領域でAIを活用したことで成功した事例はありますか。
モーガン-ヴァンドーム氏 代表的な事例として、クリスマス商戦で売り上げを伸ばしたフレッシュフード関連企業の取り組みが挙げられます。フレッシュフードは賞味期限があるため、多くの在庫を抱えることがリスクになりますが、クリスマス商戦期は大きく需要が伸びるために売れ筋の商品をしっかりと捉えて在庫を持つことが重要になります。
そこで、AIを活用し過去の販売データと在庫データなどを学習させることで、より高精度な需要予測を行えるようにしました。これにより、有効な商品在庫を保持でき、回転させることができ、売り上げを大きく伸ばすことができたといいます。これはまさにAIを活用した「スマートデシジョン」の成果だといえるでしょう。
これにもいくつかのキーポイントがありました。AIを活用したマーケットプランニングとその実行に対し、サプライヤーデータと企業データの統合が必要になりました。また、これらを統合基盤上で管理、運用していく必要があります。AIで成果を得るためには、基盤やデータの準備が欠かせません。
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