実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第29回は、採用が広がりつつある3次元実装と熱の関係について取り上げる。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2013年8月号の記事を転載しています。
電子機器の熱問題は、実装層密度の上昇と回路の高速化によって、問題がますます大きくなっています。
実装の高密度化は部品の小型化により単位面積あたりの部品数=発熱源数の増大へつながります。
また、ICの微細化により、IC内部の素子の高密度実装化はやはりICチップの発熱を増大させます。
CMOS回路では回路の高速化はそのまま回路の消費電力=発熱の増大につながります。
ICの発熱は多くの問題を発生させます。電子回路の動作にとっては低温であればあるだけ条件がよくなります。
例えば超伝導は数度Kの長低温での現象ですし、導体の抵抗率は温度が低くなるほど小さくなります。回路の動作速度は大きく温度に依存し、素子が高温になると回路が正常に動作しなくなってしまいます。
プロセッサチップに温度センサーを付け、温度が規定値よりも上がるとクロックを自動的に遅くする仕組みがあります。これは回路の動作速度を低下させて、これ以上の発熱を抑えると同時に、高温下では回路が高速動作できないので、低速にする意味もあります。
また、高温動作で回路が速度以外にも悪影響を受けるものとしてダイナミックメモリ(DRAM)があります。現在、主メモリとして普遍的に使われているダイナミックメモリ(DRAM)は記憶素子はコンデンサとなっています。
このコンデンサに電荷がたまっているか、電荷がないかで『1』と『0』を判定します(図1)。
コンデンサに接続されているラインは高いインピーダンスをもち、溜まった電荷を保持していますが、理想的な∞のインピーダンスではなく、ある程度の値をもっているため、電荷は徐々にもれていきます。
メモリ容量を大きくするため、チップを微細化したため、コンデンサの容量は非常に小さく、蓄えられている電荷も微小です。
この電荷が『0/1』の判定ができなくなるほど少なくなる前に一度データを読み出し、データを再書き込みし電荷をリチャージするのがリフレッシュと呼ばれる動作です。
CPUやコントローラICがアクセスしていないメモリでも全てのメモリは自分自身で一定時間ごとにリード/ライトの動作を行っています。
当然、このリード/ライトの動作の実行は電力を消費します。このメモリチップに蓄えられている電荷は温度が高いほど運動エネルギーが大きくなり、コンデンサからの漏れが早くなります。
このため、メモリが高温になるとデータが消失してエラーとなるか、または、あらかじめ高温動作を想定して短いインターバルでリフレッシュを行うようにし、消費電力を増大させます。
熱問題で大きな問題に一つに熱応力があります。
シリコンでできているICチップとインタポーザ基板、パッケージはおのおの異なる材質で作られています。
これらの素材は各々熱膨張率が異なります(表1)。
熱膨張率の異なる素材を密着させておくと、この熱膨張率の違いにより、接合部に力(熱応力)がかかります(図2)。大きな温度変化が繰り返されると、ついには、接合部や強度的に弱い素材が破壊されます(図3)。
金属のヒートスプレッダ夫封止の場合ICチップとカバー金属の間に熱伝導率が高く、柔らかい材料を充填するのは、放熱特性を高めると同時にシリコンと金属の熱膨張率の違いを吸収する目的もあります(図4)。
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