ICの動作と熱には密接な相互関係がありますが、これはICパッケージ内だけの問題ではありません。
ICの動作温度が上昇すると基板の特性にも影響が現れます。ICの動作温度と基板の特性の間にも相互関係があります。
FR4を始めとする基板材料の誘電率や誘電損失(tanδ)は温度によって値が変化します(図13)。
基板の配線やプレーンに使われている銅の抵抗率はやはり温度で変化します(表2)。
電気的な特性から見ると、ICの消費電力が大きくなると電源供給、グランドの配線経路(PDN)での直流抵抗成分が無視できなくなります。例えば1Vの電源ラインでICの消費電力が10Wだとすると、基板上の電源(電源コネクタか、基板上のDC-DC電源)からICの電源ピンまでの経路には10Aの電流が流れます。もし、この経路の抵抗値が1/100Ω(10mΩ)という小さな値でも電圧降下は0.1Vにもなってします。
これは電源電圧の10%で、ICの電源電圧変動許容値(±3%)よりもはるかに大きな値です。
もし、銅の抵抗値が温度変更により変化するとICの電源電圧が変化します。
銅は表2より、1℃の温度変化で4.4/1000の抵抗が変化します(抵抗率の温度係数)。
もし、ICが高速動作して、50℃の温度上昇すると、IC周辺の銅の抵抗は22%上昇します。
銅の抵抗が上昇すると、ICの電源電圧降下はさらに大きくなりますし、銅箔を流れる電流での発熱も上昇します。
そこで、新しい解析の手法として、熱解析とPI解析を連動させる考えが出てきました。最近は、熱解析とPDNに流れる電流を基にしたDC電圧降下解析を連動させて解析するツールも幾つか現れてきています(図14)。
前田 真一(マエダ シンイチ)
KEI Systems、日本サーキット。日米で、高速システムの開発/解析コンサルティングを手掛ける。
近著:「現場の即戦力シリーズ 見てわかる高速回路のノイズ解析」(技術評論社)
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