アリックスパートナーズが日本と同様に韓国とシンガポールの調査も行っている。これらの国と日本の状況を比較した場合、日本の破綻予測企業の比率は極端に低い結果となっている。2013年第3四半期(7〜9月)を見た場合、韓国は26.0%、シンガポールは12.2%が破綻予測企業となっている。
韓国は、2012年第4四半期(10〜12月)も破綻予測企業の比率は27.0%で、1%減少しているものの、企業の危機レベルは高いままとなっている。実際に2013年5月には財閥系で造船では韓国トップ5に入るSTXグループが破綻した他、出版や食品、建設などを抱える中堅財閥の熊津グループ(ウンジングループ)も2012年秋に破綻した。「日本では企業規模の小さい業界の危険度が高かったが、韓国は財閥系などまで影響が及んでいることから状況は深刻だ」と野田氏は語る。
要因としては、ウォン高による輸出産業への打撃と、不動産不況など内需の低迷があるという。特に危険度が高い業界は「造船」「金融」「不動産」「重機」などで「資金の投資から回収までのリードタイムが長いところが、急な経済環境の変動に付いていけずに厳しくなっていることが特徴的だ」と野田氏は分析する。
これらの数値を見ていると、アジア各国に比べ日本企業の復活に期待が持てそうだが、そう簡単ではない。問題となっているのは“生ける屍”となっている企業だ。
EWMは過去の健全企業と破綻企業のデータを基に分析を行っている。しかし日本には上場企業はつぶさないようにする商習慣がある。厳しくても破綻にならなかったケースが過去に多いため、破綻予測企業の比率が必然的に下がっているというわけだ。
「公的資金の注入や周辺企業の援助があるため“生きているように見えるが実際には死んでいる”企業が、実際には数多く存在しており、それらを含めると決して楽観はできない状況が続いている。見掛け上でリスクが下がっている間に抜本的な改革に取り組む必要がある」と野田氏は警鐘を鳴らす。
一方で「日本で行われている企業再生のやり方が破綻予備軍を増やしている」(野田氏)と企業再建方法の問題点も指摘する。中長期的な視野に立った再建策ではなく財務リストラばかりが先行し、結局事業が維持できなくなるケースだ。
例えば、2013年第2四半期に破綻したある企業の例では、EWMにより2010年半ばに破綻リスクが警告レベルに達した。そこで経営陣は子会社や事業部門の売却、人員削減などの財務リストラを実施し一時的キャッシュフローが改善した。しかし、ビジネスに必要なリソースも売却してしまい、オペレーションの改善も不十分だったため、2011年第3四半期には再び警告レベルに達し、最終的には破綻に至った。
「これは日本企業における再生失敗の典型例だ。破綻リスクが警告レベルに達した場合、迅速なキャッシュの確保は最優先事項であるが、そのために今後の再建に必要なリソースを手放せば、再建はおぼつかなくなる。キャッシュ確保とともにまずオペレーション改善の計画を作らなければならない」と野田氏は再建方法について提言している。
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