アリックスパートナーズは、航空機関連市場に関する調査結果を発表した。同調査結果では、MRJや炭素繊維素材の利用拡大などで日本企業の存在感拡大はあるものの、航空機のサプライチェーンにとって、今後は中国が存在感を高めるという見通しを示している。
コンサルティングファームのアリックスパートナーズは2013年10月15日、航空機市場に対する航空会社(キャリア)、機材製造メーカー、部品製造メーカーの動向について調査結果を発表した。調査結果によると航空業界は競争激化により、収益面での厳しさを増しており、「勝ち組」と「負け組」が明確に分かれていく可能性を示した。
同社は企業再生を中心としているコンサルティングファームで、米国ゼネラルモーターズ(GM)や日本航空(JAL)など多くの企業の再建に関わっている。業界調査についてはこれらのコンサルティング業務で得られた知見をベースにまとめたもので、今回発表した航空業界の動向についても毎年発表している。
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航空機産業は、LCC(格安航空会社)の拡大などによる航空会社が増加しており、必要とされる航空機の量は増える一方で、それ以上のスピードで競争が激化する状況となっており「勝ち組」「負け組」が明確に分かれつつある状況になってきている。
アリックスパートナーズ・アジア・エルエルシーのバイスプレジデントの上野正雄氏は「航空機産業全体を見るとリーマンショックで大きく落ち込んだが、それ以降は回復傾向を示している。しかしより詳細を見てみると、機材メーカーや、リース業者が大きく収益性を伸ばしている一方で、航空会社は平均利益率が3.3%程度で非常に厳しい環境にある」と話す。
その中で「勝ち組」として、位置付けているのが「リース業者」「推進装置OEM」「設備OEM」「キャビンOEM」などの分野だ。「これらの分野は販売により一過性の収益を得るだけでなく、アフターマーケットでも継続して収益を獲得できるところが特徴だ」と上野氏は指摘する。
例えば、米国GEや英国ロールスロイス、米国プラット・アンド・ホイットニー(P&W)などのエンジンOEM企業は、寡占化が進んでいる一方で、納入途上で数多くのチェック工程が発生し、そのたびにビジネスが発生する。また定期的なメンテナンスが必要で、一度納入すると安定した収益が計算できる。
一方で「負け組」として挙がったのが「航空構造設計」と「航空会社」だ。航空会社はLCC参入や中東航空会社の躍進などにより、激しい競合状態となっており、全社の平均利益率は3.3%。ビジネスモデルとしても「フルサービスの従来航空会社 VS 低サービス・低料金のLCC」というここ最近の構造が崩れてきており、どこで差別化を進めるのかが難しい状況となっている。
上野氏は「JALや全日本空輸(ANA)のような業績は世界では異例。日本でもLCCがサービスモデルの再編を行うなど、業界は激しい動きを示している。短期では高収益は実現できても、今後10%を超えるような大きな利益率は見込めないだろう」と述べる。
また、航空構造設計分野については「非常に小さな企業が乱立しており、さらにその中で利益を上げられている企業は一部だ。米国グッドリッチや英国GKNなどの一部の大手を除くと、今後の開発コストに耐えられる状況ではなく、再編が進むだろう」と上野氏は厳しい見通しを示す。
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