図2を見てください。「握力の弱い人でも使いやすいホチキスの開発」……これをトライアルしてみましょう。
まず、この商品を、見たことも使ったこともない人へ説明してください。恐らく、10人が10通りの説明をするでしょう。説明を受けた人は、「書類をとじるための文房具であること」は理解できると思います。
ところが説明がうまくないと、説明を受けた側が、「こういう使い方をしてもよいのか」「紙以外の素材はとめられるのか」など疑問を抱きます。そして、いざ購入となれば、「1000円なの? 100円なの?」という具合に、何度も質問することになります。
そう、そう! そうなんです!! 僕も、仕事で何か説明すると、何度も何度も質問されます。ちゃんと説明しているつもりなのに……。
私も、とある人に、何度も何度もデートに誘われます。「あんたに興味ない」って言っているつもりなのに……。
ええっ! 誰それ? ねえ?
2人とも、修行が足らねぇ証拠だぜぃ!
エリカちゃんのは、ちょっと違うんじゃないですかね……。
「何度も質問される」――これを回避するのが、コミュニケプレゼンスキルアップであり、その中の1ツールである「6W2H」です。さて、表4は、筆者による「一般的なホチキスを説明するための6W2H」です。このような簡単なフォーマットで、何を説明するかではなく、どのように説明するかを事前に練る必要があるのです。
6W2H:何を話すのではなくどう話すかが重要、そのための道具である。
そして常に、「6W2H」を訓練しておけば、毎度毎度、事前に練る必要がなくなります。新人設計者のあなたには、この訓練が必要です。この「訓練」が設計者の修行です。
ここまで理解したか? 表4は、あくまでも、一般的なホチキスの6W2Hだ。そんじゃ、さっきゆった「握力の弱い人でも使いやすいホチキスの開発」の場合はどうする? あん?
え〜〜と……。
「エイト(8)」じゃねぇ、「ろく(6)」だって言ってるだろ!! 6W2Hっ!
……。
私なら、6W2Hの「Whom」と「Where」の項目を修正しますね。Whomには幼児や高齢者を付加、Whereには、幼稚園、小学校、高齢者集合ホーム、リハビリセンターを追記します。
そうだ、さすがエリカちゃん! 設計の基本である、「企画書」「設計仕様書」の出来上がりだ! これがなきゃ、設計はできないはずだ! 6W2Hを理解できねぇやつが、ガラケーを作っちまったんよ!
ぬおっ! 負けたー。
次回も、コミュニケプレゼンのための道具であり、設計者必須の設計のための道具である「6W2H」を学びます。ご期待ください。
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また次回お会いしましょう。
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。
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