比喩とQC7つ道具を使って、小難しい話を分かりやすくしよう甚さんの「コミュニケプレゼン」大特訓(5)(1/3 ページ)

誰かに専門的なことを説明するときは、なるべく簡単なことに置き換えて説明しよう。カレーライスのように身近で親しみやすい例がよい! 自分自身の理解度が甘ければ、比喩もうまくできないかも。

» 2014年02月19日 11時00分 公開
[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),MONOist]

当連載の登場人物

甚

根川 甚八(ねがわ じんぱち)

根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん

良

国木田良太(くにきだ りょうた)

ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。甚さんいわく「イマドキな若者」。機構設計者。通称、良君


エリカ

沢田恵梨香(さわだ えりか)

ADO製作所 PC事業部 設計2課に勤務する派遣社員。良君のい〜加減な設計を製図でしっかりフォローする優秀な設計アシスタント。製図専門学校卒。通称、エリカちゃん


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。


 第34回にかけて「6W2H」について解説してきました。

 設計者とは、決して一人で仕事を成し遂げているわけではありません。お客さまをはじめ、必ず他の人とコミュニケーションを取りながら仕事を遂行しているはずです。つまり、そのスキルが6W2Hであり、設計者の修行の1つでもあります。設計者も「職人」ならば、修行なしに構想設計や製図に、あるいはいきなり3次元CADや3Dプリンタを使うというわけにはいきません。

良

これからは、出張レポートや実験レポートなど、各種レポートもいきなり書くのでなく、6W2H表にまとめから書くようにしました。


エリカ

年内に転職する私も、6W2Hにまとめてから、面接に臨みたいです。


甚

目的は何であれ、いい心掛けじゃねぇかい! あん? そんじゃ、最後に6W2Hをまとめるぜぃ! 6W2Hとはなぁ……。


 6W2Hとは、「何を説明するか」ではなく、「どのように説明するか」を事前に検討する道具(ツール)でした。さて、今回紹介する道具は、何でしょう。

甚

今回紹介する道具は、「比喩」だ!


表1 コミュニケプレゼンスキルアップの各種道具(「ついてきなぁ!設計心得の見える化『養成ギブス』」日刊工業新聞社刊より)

 筆者は比喩の考え方を小学校で習いました。決して、難しい考え方ではありませんね。

 比喩は、技術者向けのコミュニケプレゼンに、大変ふさわしいツールです。

 技術の進歩とともに、専門分野もますます細分化/専門化しています。つまり、あなたがこれから説明しようとする技術分野の内容が、技術者であるあなたの上司や同僚ですら理解できないほど複雑な時代になっています。

 技術者が理解できない内容が、文系や事務系の人に理解できるはずがありません。要するに、そのようなときに用いるコミュニケプレゼンスキルアップのツールが比喩なのです。難しい事象を説明するとき、簡単な事象に置き換えて説明します。

エリカ

私はいつ習ったか、もう覚えてないですね……。小学生のときでしたっけ?


良

学業の記憶なら、ガリベンだった僕に任せてくださーい! 僕の世代でも、比喩は小学校で習ってますよ。中学生のときにも習いましたし。


甚

比喩とはなぁ、難しい事象を簡単な事象に置き換えて説明するツールってことだぜぃ。つまシ、難しい技術解説や用語をだなぁ、例えばよぉ、日常生活のあれこれに置き換えて説明してみるんだぜぃ! ……ほら、もう理解できただろ? んじゃ、今日から早速試してみろよ〜! 本日は以上っ!


エリカ

え? えええ? これで終わり?


良

6W2Hは長々と説明したくせに……。


甚

ああん? 何だよ〜、これじゃ不服かい! しゃぁねぇ、そんじゃもう少し具体的に言えばよぉ、難しい技術解説や用語をだなぁ、グラフや表で表現するってことよ!


「それ、QC7つ道具のことですよね」

良

あ、そういうグラフや表を「QC7つ道具」というんですよね。多くの企業が新人教育で教えています。


甚

お、さすがじゃねぇかい。


良

ただ、「そんなもん、いちいち社会人が習うのかい」と、がっかりしましたけどねぇ。


 多くの企業で新人研修中に習うのが「QC手法」です。これは、技術者の基本です。「QC手法(Quality Control)」とは、JIS Z8101には「買手の要求に合った品質の品物又は、サービスを経済的に作り出すための手段の体系」とあります。筆者は凡人なので、何を言っているのかさっぱり分かりません。

 QC手法とは、顧客第一主義に基づく企業の改善活動です。例えば、顧客クレームのトラブルを「問題解決のためのQC7つ道具」と呼ぶツールを使用した「科学的思考」の基に分析することが推奨されているのです。

 お叱りを覚悟して超簡単に言えば、以下の表2に示す7つ道具を使って分析すればよいということです。

表2 QC 7つ道具の簡単な説明(「ついてきなぁ!設計心得の見える化『養成ギブス』」日刊工業新聞社刊より)
良

フッ……。僕は国立の最高峰である富士山麓大学 工学部 大学院を主席で卒業しましたが、何か。QC7つ道具なんて、そんな幼稚なツール、いまさらこの僕に必要ですか?


エリカ

……今、何かスイッチが入った音が。


甚

院卒で学業トップ! そうかいそうかいそうかい!! でもなぁ、実務能力ゼロ!、ゼロ!、ゼローッ! いつまでたってもゼーーーーーーーーーロッじゃっねぇかーいっ! オメェみてぇな奴を「永遠の0」っていうらしいなぁ、あ〜ん!?


良

それは「永遠の0」の作者さんに失礼ですよ! 作者さんに謝れ〜っ!! 謝れ〜!


甚

オメェみてぇな奴にはよぉ、零戦の赤サビと、その設計者堀越二郎氏の爪の垢をせんじて飲ませてぇもんよ! いんや〜、それももったいねぇときたもんだ!!


エリカ

うるさいっ! どっちも「豆腐の角に頭ぶつけて死んじめぇ」!!


良

ビクゥッ!


甚

ななっ!?


 “エリカさま”の降臨に、甚さんも良君もわれに返ったようです。そういうわけで今回は、このQC7つ道具を使いながら、比喩について解説していきます。

 QC手法やQC7つ道具の詳しいことは、既に、このMONOistを含むWeb上に、やさしく丁寧に解説している記事が数多く存在しています。本記事を読むのと合わせ、QC手法やQC7つ道具についても調べてみることをお勧めします(関連記事:「現場の管理監督者が掌握しておくべき品質管理手法はこれだ!」)。

 そういえば最近、Web検索すれば容易に入手できるような知識や情報を収集しただけの「ウィキペディア型」の書籍やセミナーが散見されるようになり、多くの技術者が閉口しています……。

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