デバイスとクラウドを活用したシステム企画・開発・プレゼン力を競う、学生向け競技会「第4回 Device2Cloudコンテスト」の決勝大会が東京電機大学 東京千住キャンパスで開催された。本稿では、上位チームのプレゼン内容を中心に決勝大会の模様をお伝えする!
2013年12月7日、東京電機大学 東京千住キャンパスにおいて、システム企画・開発・プレゼン力を競う、学生向け競技会「第4回 Device2Cloudコンテスト」の決勝大会が開催された。
同コンテストは今年(2013年)で4回目を迎える。参加する学生らは、マイコンとセンサー、そして、ネットワークサービスとの連携などを活用した組み込みアプリケーションを考案しなければならない。そのアイデアは、回を重ねるごとにレベルアップしており、前回大会の優勝チーム(中国職業能力開発大学校)は、同年11月にパシフィコ横浜で開催された「組込み総合技術展 Embedded Technology 2013(ET2013)」の日本マイクロソフト・ブースで優勝作品を展示する機会が与えられた。
第4回大会は、前回よりもさらに参加申し込み数が増え、全20チームがエントリー。同年10月下旬に開発構想書とプレゼンテーションビデオによる予選審査が行われ、上位5チームが今回の決勝大会のステージに進出した。決勝大会では、各チーム15分間のプレゼンテーションを実施。最終審査により優勝チームが決定した。
決勝大会の結果は以下の通りだ(表1)。
順位 | チーム名(学校名) | システム名 |
---|---|---|
優勝 | D2K(拓殖大学) | 洗濯物の乾き具合・天気情報を通知するシステム |
第2位 | FBL(中国職業能力開発大学校) | GPS・温度センサーによる牛の状態監視システム |
第3位 | KAWAGANTZ(中国職業能力開発大学校) | 自動受付システム |
表1 「第4回 Device2Cloudコンテスト」決勝大会の結果 |
本稿では、優勝した「D2K」(拓殖大学)と、第2位の「FBL」(中国職業能力開発大学校)のプレゼンテーションをリポートする。
優勝したD2Kは、毎日の洗濯をより快適にする「洗濯物の乾き具合・天気情報を通知するシステム」を企画・開発し、プレゼンテーションを披露した。一言でいうと、洗濯物がいつ乾くのかをお知らせしてくれるシステムで、センサーユニットを搭載した「洗濯物管理ハンガー」によって、自宅周辺の天候情報(環境情報)を監視するものだ。
同システムで収集する環境情報は、位置、温度、気圧、明るさ、風量だ。これらの計測に「.NET Gadgeteer」のセンサーモジュール(GPS、温度センサー、気圧センサー、照度センサー)の他、自作のオリジナルセンサーが用いられた。自作したのは熱式の風速センサーで、9V電源で温められた抵抗に、温度センサーを密着させて温度を計測し、風で冷却された際の温度変化から風量を算出するという仕掛けが用いられている(Arduinoを活用)。
洗濯物管理ハンガーで取得した環境情報は、「Windows Azure」上に実装されたサービスに送られ、洗濯物が乾く時間を算出。この計算結果を、家庭内に設置した「Armadillo-440」(OSに「Windows Embedded Compact 7」を搭載)が取りに行き、液晶画面に表示する。利用者が増えれば、より多くの情報が蓄積されるため精度や価値の向上も期待できる。さらに、将来展開として、収集された各種センサー情報を天気情報サービス会社などに提供することも考えられるという。
審査員からは、「降雨も検出するセンサーをなぜ付けないのか。乾いたことを湿度や重量から判断したらどうか」といった、質問というよりも、システムへの追加要求がコメントとして挙がっていた。
第2位となったFBL(中国職業能力開発大学校)は、牛にセンサーを取り付け、牛の位置と体温を監視する「GPS・温度センサーによる牛の状態監視システム」を企画・開発した。牛に取り付けるセンサーユニットには、GPSと温度センサーが搭載され、PICマイコンにより制御が行われる。また、近距離無線通信規格「ZigBee」に対応し、ZigBeeのマルチホッピングにより、距離が離れた場合にも対応可能だという。
このセンサーユニットによって収集された牛の位置と体温情報は、Armadillo-440を介してクラウドサービス上に送られ、「Bing Maps」上にプロットされる。センサー情報は、SQL Severに一定間隔で蓄積されるため、牛の移動や体温情報の関係性分析などを、今後の酪農に役立てることができるだろうという。
FBLは、実証実験の画像や動画でシステムを紹介しつつ、会場に牛のぬいぐるみを持ち込みプレゼンしていた。このようなスマートアグリに関するシステムは、既に大手メーカーなどが類似のシステムを開発しているが、学生らが短期間で企画・開発した点は高く評価できるだろう。
決勝大会のプレゼン終了後、別室にてポスター&デモ展示セッションを開催。プレゼンテーションも終わり、リラックスした雰囲気の中で参加者と来場者がコミュニケーションしていたのが印象的だった。ちなみに、決勝大会には企業の採用担当者なども見学に来ており、エンジニアの卵に熱い視線を送っていた。
審査委員長の長坂康史氏(広島工業大学)は「開催4回目を迎え、やっとここまできた。発想力が非常に豊かになった。中にはもう少し内容を詰めればビジネス展開もできそうなものがあった」と決勝大会を総括した。
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