第1回 D2Cコンテスト優勝は“目覚まし時計×Twitter”組み込み機器をクラウドへ

学生向け組み込みアプリケーション開発コンテスト「Device2Cloud コンテスト 2011」の決勝大会が開催された。記念すべき第1回大会の優勝は筑波大学大学院のチーム「SiNONOME」だ

» 2011年03月07日 11時40分 公開
[八木沢篤,@IT MONOist]

 「クラウドへつながる組み込み機器を開発し、無限に広がる可能性をコンテストを通じて探求し、使って楽しく役立つアイデアを実現しよう!」――2011年3月4日、このスローガンの下、学生向け組み込みアプリケーション開発コンテスト「Device2Cloud コンテスト 2011」の決勝大会が東京電機大学 神田キャンパス 丹羽ホールで開催された。

 同コンテストは今回が初開催となる。主催の東京エレクトロン デバイスのほか、協賛企業として、日本マイクロソフト、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン、アットマークテクノ、サムシングプレシャス、アフレルが協賛企業として名を連ねている。

学生向け組み込みアプリケーション開発コンテスト「Device2Cloud」 画像1 学生向け組み込みアプリケーション開発コンテスト「Device2Cloud」

組み込み+クラウドをテーマにした初のコンテスト開催

 同コンテストは、高等学校、専門学校、高等専門学校、大学/大学院、職業訓練校などの学生が対象。参加者2〜3名(D2C 2011では特別処置として2〜4名)で1チームとし、大会規定のソフトウェア環境と機材(CPUボードとセンサボード)を用いて、“クラウドサービスと連携する”組み込みデバイス/アプリケーションを企画・開発し、プレゼンテーションでそれらを披露しなければならない。

 CPUボードについては、i.MX25(ARM9)搭載、75×50mmサイズでタッチパネル液晶インターフェイス対応のアットマークテクノ製小型CPUボード「Armadillo-440(液晶モデル開発セット)」を、センサボードについては、USB内蔵マイコン、3軸加速度センサ/静電容量式タッチセンサ/照度センサなどを搭載したフリースケール・セミコンダクタ製の「JM Badge Board」を使用する(これらセンサのうち最低1つ使用)。

「Armadillo-440」液晶モデル開発セット「JM Badge Board」 画像2 (左)「Armadillo-440」液晶モデル開発セット/(右)「JM Badge Board」

 また、ソフトウェア環境については、マイクロソフトの最新組み込みOS「Windows Embedded Compact 7 CTP版」を、BSPはD2Cコンテスト向けにJM Badge Board用ドライバなどを追加したサムシングプレシャス製の「Lilas(Basic Version 特別版)」を使用する。なお、参加チームには、同BSPを用いて作成したビルド済みOSイメージが配布されている。

 2010年8月の開催告知から、参加者トレーニング、予選審査などを経て、エントリー全10チームから4チーム(表1)が選抜され、今回の決勝大会に臨んだ。

チーム名 学校名 作品名
T-YKLAB 奈良工業高等専門学校 どすこいっしょ
チームElectric 奈良工業高等専門学校 connectouch music
SiNONOME 筑波大学大学院 ねいったー
the tissue 静岡県立大学 勤務シフト管理システム
表1 D2Cコンテスト 2011 決勝大会進出チーム

企画・開発・プレゼンテーションの総合力が勝敗を左右した決勝大会

 決勝大会では、15分間のプレゼンテーション(企画説明、開発プロセス、実機デモンストレーション、まとめ)と5分間の質疑応答が行われる。

 記念すべき第1回大会の審査員は、広島工業大学 教授 長坂 康史氏(審査委員長)を筆頭に、東京電機大学 教授 柴合 治氏、東京エレクトロン デバイス 成田 隆氏、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 佐藤 奨氏、日本マイクロソフト 太田 寛氏が務めたほか、技術委員長としてサムシングプレシャス 古賀 信哉氏が同大会における技術面のサポート全般を担当した。

 前述のとおり、同コンテストのポイントは“使って楽しく、役立つアイデアを実現すること”である。そして、15分間のプレゼンテーションで自分たちが実現しようとしたことを“いかに人に伝えられるか”が勝敗を左右する。

 第1回大会の結果は、まさにこれらポイントを着実に押さえた(筆者の目から見ても他チームと比較して、頭1つ2つ分くらい飛び抜けていた)筑波大学大学院のチーム「SiNONOME」が優勝の栄冠を勝ち取った。

 優勝したSiNONOMEの作品は、目覚まし時計とTwitterを連動させた「ねいったー」というシステム。ハードウェア構成は、ネットワーク対応の目覚まし時計(Windows Embedded Compact 7搭載のCPUボード側)と、スマートピロー(枕にセンサボードを搭載したもの)の2つ。枕に仕込んだセンサで睡眠状態を把握し、その状態を目覚まし時計側に視覚的に(グラフ)表示したり、その情報を定期的にTwitterに送信したりするというものだ。

坪内 靖憲氏 画像3 筑波大学大学院 坪内 靖憲氏。Windows Embedded OSを使った開発は今回のコンテストが初めてだったという

 開発した筑波大学大学院 坪内 靖憲氏は、プレゼンテーションの中で、「自分は朝が弱い。4月から社会人になるが、朝起きられるかどうかが不安」という生活に身近な悩みをきっかけに、目覚まし時計とTwitterを連動させるというアイデアを思い付いたという。生活に役立ととともに、Twitterで他人とのつながりを生み出せるという遊び心を付加した作品に仕上げていた。また、非常に細かい点ではあるが、スマートピローが目覚まし時計に接続されているかどうかを画面右下にアイコン表示するなど、UI部分にひと工夫している点も地味ながら完成度の高さが伺えた。

ねいったーの目覚まし時計 画像4 ねいったーの目覚まし時計。こうした大会ではUIやデバイス自体の見た目・完成度も非常に重要。CPUボード側に外装を施すなどの工夫は他チームには見られなかった

 優勝したSiNONOME以外のチームにもそれぞれ特別賞が授与された。タッチセンサと紙相撲ゲームを組み合わせ、さらにクーポンサービスと連動させるアイデア・作品を開発した「T-YKLAB」の「どすこいっしょ」がビジネスアイデア賞を、いわゆる音ゲーとクラウドサービスを連携させて未来型の音楽ゲームを考案した「チームElectric」の「connectouch music」がUXデザイン賞を、そして、自身の経験を基にアルバイトの「勤務シフト管理システム」を考案したチーム「the tissue」がクラウド原石賞を受賞した。

作品名 チーム名 学校
優勝 ねいったー SiNONOME 筑波大学大学院
ビジネスアイデア賞 どすこいっしょ T-YKLAB 奈良工業高等専門学校
UXデザイン賞 connectouch music チームElectric 奈良工業高等専門学校
クラウド原石賞 勤務シフト管理システム the tissue 静岡県立大学
表2 第1回 D2Cコンテスト 2011 入賞チーム

T-YKLABのどすこいっしょのデモ 画像5 T-YKLABのどすこいっしょのデモ。センサボードのタッチセンサをたたいて力士(キャラクター)を動かして相撲を取る
チームElectricのconnectouch musicのデモ 画像6 チームElectricのconnectouch musicのデモ。タッチセンサをCPUボードの背面に搭載するという発想が面白い
the tissueの勤務シフト管理システム 画像7 the tissueの勤務シフト管理システム。決勝大会出場チーム中で唯一ビジネス寄りのアイデアが盛り込まれていた

 D2Cコンテストは、組み込み関連のコンテストの中ではめずらしく、組み込み機器とクラウドサービスとを連携させるアプリケーション開発がテーマとなっている。NHKロボコンやETロボコンのように機械・制御/電気・電子の知識がなくても挑戦できるという“裾野の広さ”が大きな魅力といえるだろう。

決勝大会進出4チームと審査員一同 画像8 決勝大会進出4チームと審査員一同

 次回大会では、モノづくりにしてみたい、自分のアイデアを形にしてみたいという意欲のある挑戦者が、今年以上に現れることに期待したい。

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