作っている“手”にまで部品を届けます――航空業界で実現する究極の物流の姿ニッポンの「お・も・て・な・し」発動

モノを作るには、まずモノを運ばなければならない。その「運ぶ」を支えるのが物流企業だ。東京国際航空宇宙産業展2013で出展された注目のロジスティクスソリューションについて紹介する。

» 2013年10月04日 12時00分 公開
[三島一孝,MONOist]

 航空機や人工衛星、ロケットなどの大きく複雑なモノを作るのには膨大な作業が発生する。例えば航空機などは100万点規模の部品数があるとされており、それを集めて組み立てていく作業は気が遠くなるほど複雑なものとなる(関連記事:川崎重工、航空機の設計情報を管理するシステムが本稼働――100万点の部品を管理)。

 当然システムによる管理を行うのだが、実際に入手した部品を「どのように管理し、数々の工場へ運んでいくのか」また「完成した機体をどのように運ぶのか」を安全に、品質を確保して実行するのはとても難易度が高い。そうした領域を請け負い、より高度なサービスの実現を目指しているのが、物流企業だ。



 特に航空宇宙領域では、輸送工程において高い品質が要求され、航空宇宙産業における品質マネジメント規格「AS9120」などの取得も必要になってくる。物流企業各社が主張するのは「モノを運ぶ技術」の重要性だ。「東京国際航空宇宙産業展2013」(2013年10月2〜4日、東京ビッグサイト)では、物流各社がより高度なサービスをアピールしている。

MRJ生産作業者の手まで部品を届ける

 日本通運は、素材や部品の調達、ユニット化、機体の完成や保守まで、航空機のライフサイクル全域をカバーするロジスティクスソリューションを出展。航空機輸送や人工衛星輸送プロジェクトの導入事例や、サービス提供事例などを紹介した。同社では40カ国400拠点に及ぶ全世界のネットワークと、大型部品など特殊輸送における輸送品質、また顧客ニーズに合わせたサービスを臨機応変に提供する高度なサービスなどを強みとしている。

東京国際航空宇宙産業展2013の日本通運ブース 東京国際航空宇宙産業展2013の日本通運ブース

 厳密な温度管理が必要な炭素素材の輸送などに対応している他、ミルクラン輸送(物流企業が部品メーカーを巡回して集荷し製品メーカーに納入する巡回集荷方式。牛乳業者が牧場を巡回して牛乳を集荷することが由来)、在庫の適正化支援サービスの提供などに取り組む。

 さらに顧客ニーズに合わせて柔軟な対応が行えることが特長だ。例えば同社では輸送の安全性を保つ防振パレットを自社開発した他、多工程一括管理サービスとして物流だけでなくパーツキッティングやフェーダーラインサポートなども手掛ける。実際に三菱航空機の国産リージョナルジェット「MRJ」では、セットパーツセンターの運営を行う他、機体製造ラインの作業者の手に部品が渡るところまでの支援を行っているという(関連記事:飛行機を作るには何が必要? なぜクラウドなのか)。

「UPSやFedEx、DHLなどのグローバルの物流大手が力を入れる“小型のものをより早く”という領域では競争が激しい。人工衛星や航空機などの特殊輸送や、サービスの高度化などで特徴を出していく必要がある。顧客の声に柔軟に応えていけることは強みだ」と日本通運のブース担当者は語っている。

サービス領域拡大は各社共通

三井倉庫ブース 三井倉庫ブース

 三井倉庫も航空機や宇宙分野での物流ソリューションを提案する。日本や米国に立地する倉庫を核とし、倉庫内で行えるキッティングなどの作業を請け負うなど、サービス内容を強化している。

 郵船ロジスティクスは、ボーイングや三菱航空機の認定フォワーダー(貨物利用運送業者)としての実績を生かし、航空機専門チームによる物流ソリューションを提案した。郵船ロジスティクスのブース担当者は「日本国内企業が元気がないという話が最近出ているが、航空機業界に限っては日本企業は強さを発揮しており、中小企業を含めて物流面での引き合いも増えている」と話していた。

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