われわれの暮らしにおいて、Chromecast、そしてGoogle Castがもたらす変化について考えてみたいと思います。
Chromecastは、Google Castのクライアントとして機能することにより、TVの利用可能性を無限に拡大しました。TVの利用というと、どうしてもAV視聴のイメージがありますが、宅内におけるディスプレイの必要性は急速に高まると考えられています。
これまで宅内のディスプレイというと、何と言ってもTV、それからドアホンの簡易的なモニター、他にはあってもPCかタブレット端末といったところでした。それが、「スマートホーム」などといわれるようになり、電力やら何やらあらゆるものがネットワーク接続と監視の対象となりつつあります。また、地域コミュニケーションや買い物支援といったサービスも、新築マンションや新興住宅地などを中心に、見る見るうちに導入されていくことでしょう。すると、安さや手軽さもあって、小さめのタブレット端末を壁に設置する例が増えていくでしょう。しかし、考えてみてください。似て非なるサイズのタブレット端末が壁に何台も横並びになって、何やらグラフを表示したり、時々警告を発したりするようなリビングで、人はくつろげるでしょうか。
宅内のディスプレイはすぐに過剰供給となり、時をおかずして、ディスプレイの主導権争いが始まります。結論から言えば、サービスの類似性や重要度などの観点から数台にまとめられると考えられますが、一番多くのサービスの表示先と目されるのは、もちろんTVに決まっています。ドングルPCという点では、Chromecastは突然にしてダントツの販売数を達成しました。この記録は当分塗り替えられないでしょう。そのほとんどはTVに接続されるのです。放送受信機として始まったTVが、Chromecastにより、Google Castを受けられるデバイスの表示先になろうとしています(図4)。変な言い方になりますが、“スマートホームのスマート化”に寄与すると考えられます。
ドングルPCのビジネスという点でも、Chromecastの影響は計り知れません。2013年6月に開催された「COMPUTEX TAIPEI 2013」を視察した際は、展示している側に、何でこんなものを探しにくるのだという目で見られていたのです(関連記事:ドングルPCの登場とスマート社会への道 2ページ目「盛り上がっているのは国内だけ?」)。それが一夜にして世界中の話題をさらってしまったことについては、「さすがGoogle!!」の一言に尽きます。
Miracastドングルは以前から存在していましたし、また、単なる動画転送デバイスとしての「○○cast」ではない、NTTドコモの「SmartTV dstick」のようなデバイスも既に登場していました(図5)。Chromecastは、形としては後追いの製品となりました。それでも、Chromecastの圧倒的な普及のために、ドングルPCすなわちChromecastのようなものという認識が一般的になると考えられます。
Chromecastのようなデバイスを手掛けたいと思う企業もあるでしょう。それはそれで、1つの動向としては面白いと思います。ただし、それはドングルPCの適用のほんの一例にすぎません。
次回、ドングルPCの特徴を子細に観察しながら、その意外な用途について考察します。お楽しみに! (次回に続く)
金山二郎(かなやま じろう)
株式会社イーフロー ソフトウェア開発部 部長。Java黎明(れいめい)期から組み込みJavaを専門に活動している。10年以上の経験に基づく技術とアイデアを、最近はAndroidを利用したソリューションに活用している。
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