さて、日本国内で格別の盛り上がりを見せているドングルPCですが、国外の状況はどうでしょうか。今回、台湾・台北で行われた「COMPUTEX TAIPEI 2013」(開催期間:2013年6月4〜8日)を視察する機会に恵まれましたので、ドングルPCを中心に見渡してみました。
COMPUTEX TAIPEIは「CeBIT」に勝るとも劣らない、世界最大規模のコンピュータ見本市です。今回は、丸一日まじめに視察しても半分も回り切れず、その大きさをうかがい知る……というか、思い知ることができました。
その中で、ドングルPCの扱いは予想外に“ささやか”であることにまず驚かされました。技術的には、タブレット端末やボックスタイプのSTBを作っている企業なら、それらしいドングルPCを作り上げることはできます。しかし、それをブース全面に押し出している企業はほとんど“皆無”といえる状態でした(図3、図4、図5)。
なぜドングルPCの扱いが小さいのか――。この理由を知るためには、幾つかの観点から考察することが必要です。
COMPUTEX TAIPEIは、台湾のハードウェアメーカーが主体の展示会ですから、「ハードウェアを売る」ということが多くの参加企業のゴールになります。しかし、ドングルPCは“安さが売り”ですから、当然のことながら1台当たりの利益は少なく、たくさん売らなければ安くもできないし、儲かりもしません。ハードウェアとしては完成していながらも、スタンドアロンPCとしては取りえに乏しく、競争力がないと見なされているようでした。
もちろん、“サービスの付加価値”としての利用をイメージできる企業もあるにはあるでしょう。しかし、実際に、サービス事業者と話をして、サービスに特化したソフトウェアを構築し、バックエンドと連携させるためには、ハードウェアメーカーの業態から大きく踏み出さなければなりません。いまだに、「ソフトウェアはハードウェアのおまけである」という意識が残る業界で、サービスまで手掛けようという意識は希薄でしょう。
今でこそタブレット端末の出展が多くなりましたが、もともと「自作PCの祭典」などと呼ばれていたCOMPUTEX TAIPEI。筐体、メモリ、ファンなどのPCパーツや、USB接続の周辺機器などが、どこまでも展示されていて、ブースのサイズも大きく、非常に多くの来場者を集めていました。そのような、いわば「花形」の展示の前に、ドングルPCは必然的に隅に追いやられ、路傍の花のごとく、隅でひっそりと展示されている次第でした。
とはいえ、さすが世界最大規模の展示会です。会場全体で20点ほどの展示があったことを付け加えておきたいと思います。
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