スティックタイプの小型コンピュータ(ドングルPC)を挿すだけで、家のテレビが“スマートテレビ化”される。近年では、国内携帯電話キャリアが提供するドングルPCによって、スマートフォン向けの動画配信サービスを家庭のテレビでも楽しめるようになった。当初、ドングルPCは、STB(Set Top Box)の領域で注目されてきたが、実はその可能性は“無限”にある。本連載では、効果的な使い道や課題などに触れながら、ドングルPCの可能性について掘り下げていく。まずは、「COMPUTEX TAIPEI 2013」の視察の模様を交えながら、昨今のドングルPCかいわいの動向に触れる。
いきなりですが、年初のことを少し振り返ってみたいと思います。
今年、2013年は1月7日が多くの方にとって実質的な“仕事始め”の日だったのではないでしょうか。この日発刊される日本経済新聞(日経新聞)は、日本のビジネスマンにとって、これから1年間を占う上での材料として注目されています。
さて、皆さんは覚えていますでしょうか。1月7日の日経新聞のトップ記事が何だったかを――。
他でもありません。本連載の主役「ドングルPC」と呼ばれる、手のひらサイズの小さなコンピュータが大きく取り上げられていました。その紙面では、“スマートフォン(以下、スマホ)向けの動画サービスをテレビで楽しむための機器”という扱いだったと思います。
このようにドングルPCは、スマホ向けの動画サービスを家庭のテレビで楽しむことができる機器として注目を浴びつつありますが、実は、動画サービスにとどまらず、“私たちの暮らしを根底から変える”ほどの大きな力を秘めているのです。
本連載では、効果的な使い道や課題などに触れながら、このドングルPCの可能性について掘り下げていきたいと思います。
「スマホ向け動画、TVにも配信 ドコモやKDDI」――。これが1月7日の日経新聞の大見出しでした。要点としては、“国内携帯電話キャリアが、スマホ向けの動画サービスの加入者に対し、そのサービスをテレビでも楽しめるようにした。その表示をつかさどるデバイスがドングルPCであった”という内容です(図1)。
この記事の反響は非常に大きかったようで、日経新聞では度々サービスの詳細や動向についての特集が組まれ、IT関係の雑誌やWebメディアでも数多くの比較記事が掲載されました。
国内携帯電話キャリアにおいて、このサービスをリードしているのは最大手のNTTドコモです。クライアントデバイスである「SmartTV dstick(以下、dstick)」を7万台も配布するキャンペーンを打ち出し、話題になりました(図2)。その先の大きな展開を見据えてこその大キャンペーンであり、このサービスに賭ける強い意気込みが伺えます。
そして、手前味噌な話で恐縮ですが、筆者が所属するイーフローはdstickの製造元として、このビジネスに関わっています。
さて、そもそもドングルPCとはどんなものなのでしょうか。実は、本連載に先立つこと約1年、2012年8月の拙稿「Android搭載ドングル型コンピュータの可能性と課題」で、ドングルPCを取り上げました。この記事を読み返してみると、最初からSTB(Set Top Box)として世に登場していたことが分かります。また、その時点では、特徴として次の3点を挙げていました。
これら3つの特徴は、今でも補い合いながら有効に機能しているものと考えられます。特にその中でも、“低価格”ということがひときわ大きな意味を持ち、ユーザーに良いサービスと大きなビジネスをもたらしています。前述の記事では、一例として、キャリアが契約者数の維持・増加を目的に提供している付加サービスを挙げました。Googleが無償提供しているサービス群も分かりやすい例だといえます。
詳細については連載の後半で触れますが、「ドングルPCの可能性は無限大」といっても過言ではありません。STBという領域で台頭しましたが、これからもっと多様で大規模な適用先が掘り起こされていき、決して遠くない未来には、社会全体へ大きな影響を持つようになることでしょう。
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