Chromecastで動画を転送するためにGoogle Castというプロトコルが使われていますが、そのSDK(Software Development Kit)が提供されています(図3)。
SDKを利用すれば、どんな機器からもChromecastへの動画転送が可能になります。iOSのアプリケーションにも適用できますから、アプリケーションレベルとはいえ、iPhoneであろうがiPadであろうが、Chromecastに動画を転送する道が提供されたことになります。iOSといえば、「AirPlay」をサポートしたAV機器が増えていますが、そのような機器にはさらにGoogle Castもサポートされていくでしょう。
Googleは、なぜそのような形でSDKを提供するのでしょう。それは、「全てを破壊する」と称されるGoogleのビジネス戦略に基づく行いだといえます。
ネットワーク家電の主な相互接続規格は数多く存在します(表1)。歴史のある「DLNA(Digital Living Network Alliance)」をはじめ、AppleのAirPlayが人気を集めています。また、Wi-Fi Allianceが定めている「Miracast(ミラキャスト)」という規格も普及が見込まれています。
規格 | 策定者 | 特徴 |
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DLNA | Digital Living Network Alliance | ・歴史が長い ・参画企業が多い ・uPnP(Universal Plug and Play)などと共通仕様部分を持つ |
Miracast | Wi-Fi Alliance | ・1対1の無線通信によるディスプレイ伝送技術 ・AirPleyのミラーリングのオープンな代替という位置付け |
AirPlay | Apple | ・Appleによる独自仕様 ・iOS製品に採用されているため、AV機器の採用が多い |
Google Cast | ・Googleによる独自仕様 ・SDKを提供。iOSを含む任意のクライアントでGoogle Castの対応が可能に |
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表1 ネットワーク家電の主な相互接続規格 |
Appleのような強い推進力を持つ企業は、競合製品との差別化のためにこういった技術を独自に開発します。Appleほどではないにしても、ある技術のイニシアチブを取りたいという企業は数社が結託して1つの仕様を定め、「標準」という御旗をもって普及させようとします。そのような技術において覇権を取ること自体は、Googleの本質的な興味ではありません。しかし、自分たちのビジネスが変に制限されたりすることを、Googleはかなり嫌ってきました。そして、そういった可能性が懸念されるとき、Googleはその潤沢な資金力をもって、無料のサービスを投入するなどしてビジネスそのものを無力化、すなわち「破壊」してきたのです。
Google Castはそのような目的をもって世に送り出された技術であり、その先兵がChromecastであったと考えられます。
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