ほどよし4号は2014年に打ち上げられる予定で、それに併せ、MIPSは現在フライトモデルの開発が進められているところだ。
開発を担当する小泉准教授は「現在の超小型衛星の世界を完全に変えたい」と意気込む。「今まで超小型衛星ができることは限られていたが、いろんなことができるような推進系を搭載すれば一気に変わる。技術実証に使うとか、さまざまな利用方法が生み出されるだろう」(小泉准教授)と期待する。
MIPSによって、超小型衛星は大きな自由度を手に入れることになる。まずは、ほどよし4号で機能や性能を実証することになるが、将来的には月惑星探査も見えてくるかもしれない。例えば、欧州の月探査機「SMART-1」は、地球周回軌道からイオンエンジンを使い、月へと向かった。これと同じようなことができるだろうか。
「頑張れば」という前提付きになるが、これは「不可能ではない」という。静止トランスファー軌道(GTO)から月に行くためには、ざっくり現在の10倍のΔvが必要になる。そのために、小泉准教授は「推進剤を10倍にして、システムを軽量化して、発電能力も強化して、スラスタの直径を2倍にして、それを2〜3台搭載すれば……」という青写真を描く。
地球周回軌道からのスタートとなると大変だが、金星探査機「あかつき」のときの「UNITEC-1」のように、惑星探査機への相乗りを利用すれば、いきなり地球脱出軌道に入ることも可能だ。めったに機会はないものの、2014年打ち上げ予定の小惑星探査機「はやぶさ2」でも相乗り衛星が搭載される予定。こういった機会を生かせれば、超小型衛星の活用範囲を広げていけるだろう。
東京大学と国立天文台が共同開発した「Nano-JASMINE」という超小型衛星は、20年前の1t(トン)衛星と同等の観測性能を持つという。同じように20年後には、超小型衛星でも「はやぶさ」と同じようなことができるようになるかもしれない。もちろん通信方法など、さまざまな技術課題はあるだろうが、ブレークスルーを期待したいところだ。(次回に続く)
大塚 実(おおつか みのる)
PC・ロボット・宇宙開発などを得意分野とするテクニカルライター。電力会社系システムエンジニアの後、編集者を経てフリーに。最近の主な仕事は「人工衛星の“なぜ”を科学する」(アーク出版)、「小惑星探査機「はやぶさ」の超技術」(講談社ブルーバックス)、「宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業Vol.1」「宇宙をつかう くらしが変わる 日本の宇宙産業Vol.2」(日経BPマーケティング)など。宇宙作家クラブに所属。
Twitterアカウントは@ots_min
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