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» 2013年06月26日 11時00分 公開

100年後も事業継続するには笑顔! バネ屋さんのアートマイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(25)(2/2 ページ)

[宇都宮茂/enmono,MONOist]
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世界で一番笑顔をもらえる会社になりたい

 五光発條の経営理念は、「幸・信・繁・恕(思いやり)」の4文字です。さらに、社名にある「五」にちなんで、「笑」の1文字を加えて5文字にしたいと村井さんは考えています。目指すのは、「世界で一番、笑顔をもらえる会社」。そのためには、社長も社員も笑顔でなければいけません。

 最近、五光発條の社員たちも変わってきたといいます。その大きなきっかけとなったのは、「全日本製造業コマ大戦」への参加でした。コマ大戦は、各社が自社技術を応用して小さなケンカゴマを作って対決するイベントです。

コマの試作品

 普段の仕事とは別に、自らクリエイトし、チャレンジできる良い機会となりました。そのような変化もあって、以前はSpLinkのプロジェクトにあまり協力的ではなかった社員も協力してくれるようになったそうです。

「世界を笑顔に」。バネの帽子、バネのメガネ、バネのネクタイ! 村井さんのトレードマークのひげと相まってか、ちょっとくすっとなる

 社長は講座で、社員はコマ大戦でステップアップ――これが、会社の革新へとつながりました。「100年後も続くバネ作り」の道は、もう始まっているといえますね。

クラウドファンディングと村井さん

 村井さんは、現在講座卒業後6カ月を経て、enmonoが立ち上げた「zenmono(ゼンモノ)」というモノづくりに特化したクラウドファンディングサイトにSpLinkのプロジェクトを掲載して、量産化資金の調達と商品企画のブラッシュアップのためにマーケティングしている最中です。村井さんが用意した動画や写真を通じて、プロジェクトを支援してくださる方に対し、製品の説明と併せ、自分自身の思いや志も伝えています。

zenmonoにエントリーするSpLink

 プレスリリースも自分で行い、FacebookやTwitterなどSNSを使った情報発信も熱心に続けています。もしかしたら、読者の皆さまの中にも、それを目にしたという方もいるのではないでしょうか。

 下請けとして「バネ製造の道、まっしぐら」だった村井さんが、生まれて初めてPRや販売などを体験し、苦労も絶えないと思うのですが、着々と“マルチプレイヤー”へと成長していらっしゃいます。「自分の本当にやりたいことをやる」という思いと志で、その苦労が、むしろワクワクする楽しいことだと感じられるそうです。

 プロジェクトがうまくいけば、2013年の夏中には商品を準備して販売できるでしょうし、たとえ未成立だとしても、その経験をベースに商品のブラッシュアップを続けていけばよいのです。

バリューチェーンをつないで形にするプロデューサー

新しいマイクロモノづくりにおけるバリューチェーン(enmono社資料より)

 前回から、マイクロモノづくりのフレームワークを変えました。前々回の第23回で紹介したニットー藤沢さんの事例で、「町工場によるクラウドファンディング活用」が登場したことで、マイクロモノづくりのフレームワークに変更が生じることに気付いたからです。前回の事例でも、クラウドファンディングで製品化の資金を募っています。

 今回の村井さんについても、このマイクロモノづくりの“新”フレームワークに当てはめて整理します。

 まず企画ですが、テーマは村井さん自身が好きで好きでたまらないブロックパズルとバネ製造技術の融合で着想し、「100年後も日本でバネ製造をしたい」という思いと志でSpLinkを商品化しました。

 自社にあるリソースで何度も試作を繰り返していて、デザインについては担当してくれる仲間をzenmonoで募集中です。デザインをしてくれる人が見つかり次第、パッケージなどのデザインのブラッシュアップを図っていきます。

 zenmonoにプロジェクトを掲載するため、自分で製品紹介の動画や写真などを用意し、対価(インセンティブ)となるステッカーなども自社内で製作しました。

 今後のことはzenmonoのプロジェクトの成否によって変わりますが、何らかの手段で量産したものを販売するプロセスに入る予定です。

 今回の事例は、「マイクロモノづくり現在進行形」の事例といえます。うまくいくかどうかは現時点では分かりません。村井さんとしては、成功するまで継続できるよう、モチベーションをうまく維持していきたいとのことです。


enmonoの「マイクロモノづくり経営革新講座」

製品企画の源泉となる発想は、自分一人で生み出すのはなかなか難しいと思います。enmonoでは、マイクロモノづくり経営革新講座を開講しています。この記事に登場した村井さんはこの講座の第4期生で、マイクロモノづくりのビジネスにチャレンジしている真っ最中です。村井さんのように「今まで苦労して自社商品開発に取り組んできたけれど、うまく実を結ばなかった」「何か新たなきっかけをつかみたい!」という方にとって、「何を作るのか」というニーズ探しの手助けができるのではと考えています。

>>マイクロモノづくり経営革新講座のWebページ

発電会議

enmonoは、東京都大田区の町工場2代目集団「おおたグループネットワーク(OGN)」と組んで、「発電会議」という町工場が製品開発の種を見つけるためのオープンな商品企画会議を定期的に実施しています。製品企画の素となる発想は、1人ではなかなか難しいものです。この会が皆さんの「何を作るのか」というニーズ探しの一助になればと思っています。開催予定日や会場、テーマなどの情報は、下記のFacebookページから確認できます。ぜひご参加ください。

>>「発電会議」(facebookページ)



Profile

宇都宮 茂(うつのみや しげる)

1964年生まれ。enmono 技術担当取締役。自動車メーカーのスズキにて生産技術職を18年経験。試作メーカーの松井鉄工所にて生産技術課長職を2年務めた。製造業受発注取引ポータルサイト運営のNCネットワークにて生産技術兼調達担当部長として営業支援に従事。

2009年11月11日、enmono社を起業。現在は、製造業の新事業立上げ支援(モノづくりプロデューサー)を行っている。試作品製造先選定、部品調達支援、特許戦略立案、助成金申請支援、販路開拓支援、プレゼン資料作成支援、各種モノづくりコンサルティング(設備導入、生産性向上のためのIT化やシステム構築、生産財メーカーの営業支援、生産財の販売代理、現場改善、製造原価、広告代理、マーケティング、市場調査、生産技術領域全般)など多岐にわたる。

Twitterアカウント:@ucchan

記事で紹介した企業も登場:MMS放送アーカイブ

マイクロモノづくりが本になりました

『マイクロモノづくりはじめよう〜「やりたい! 」をビジネスにする産業論〜』(テン・ブックス)

サラリーマンも上司の下請け。脱・下請けするなら、今でしょ!




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