開発初期段階で自由に試行錯誤できるシミュレーションを――アンシスユーザーイベント製造ITニュース コンバージェンス2013

アンシス・ジャパンとサイバネットシステムはユーザーイベント「ANSYS Convergence」を開催。より幅広い場面でのシミュレーションの活用を訴えた。

» 2013年05月31日 12時30分 公開
[三島一孝,MONOist]

開発の初期からシミュレーションを活用

 アンシス・ジャパンとサイバネットシステムは2013年5月30〜31日、東京都内で恒例のユーザーイベントである「ANSYS Convergence」を開催。クラウド対応やHPC(High Performance Computing)対応の強化などで「シミュレーションを専門技術者から解放する」ことをアピールし、より広い場面でのシミュレーションの活用を訴えた。

 同イベントは毎年恒例で開催されている解析ツール「ANSYS」のユーザーイベント。2012年までは「ANSYS Conference」としていたが、2013年からは「ANSYS Convergence」に名称を変更している。「人と知と技術が結び付く場所として、方向性を示す名前に変更した。日本の製造業には従来以上にイノベーションが求められている。CAE、サポート、付加価値サービスで貢献していく」(アンシス・ジャパン代表取締役 馬場秀実氏)。同社では新たに2013年6月から名古屋に東京、大阪に続く新オフィスも設立し、さらにサポート体制を強化する方針を示した。

米国ANSYSジョシュ・フレッドベルグ氏 米国ANSYSバイスプレジデントのジョシュ・フレッドベルグ氏

 また米国ANSYSのマーケティング担当バイスプレジデントのジョシュ・フレッドベルグ(Josh Fredberg)氏が、同社の方向性を説明。「自動車や航空機、民生機器、産業機器などあらゆる分野で、数年前にはSFだ思われているようなことが実現可能になってきている。イノベーションの重要性が増す中で、シミュレーションを開発の初期段階から利用する企業が増えている。シミュレーションを開発初期から活用することで、試作のコストや時間のロスなどを抑えた上で、さまざまな試行錯誤を行うことができる」とフレッドベルグ氏は訴えた(関連記事:アンシス、HPCのアウトソーシングサービスに取り組む)。

 また、最新のANSYS R14.5について、カスタマイズの自由度が高い点やHPC対応、マルチフィジックス(連成)対応などの強みを強調した他、7月にはクラウド・ソリューションをリリースすることなどを紹介。「当社が利用を想定する領域で実際にシミュレーションを活用しているのは1%程度だ。ハードルを下げることで、シミュレーションは専門技術者のもの、という認識を打破し、より幅広い領域での活用を推進したい」とフレッドベルグ氏は話した。さらに2013年4月に発表したスイスの複合材料解析ベンダーEvolutionary Engineering(EVEN)買収により、相乗効果を広げていく方針を示している。

PC設計では四角いロボットしかできない?

ロボガレージ高橋氏 ロボガレージ代表取締役の高橋智隆氏は開発したロボットたちと登壇

 基調講演では、ロボガレージ代表取締役の高橋智隆氏と東京大学大学院工学系研究科教授石原孟氏が登壇した。

 「週刊ロビ」(デアゴスティーニ・ジャパンから発売されている組み立て式ロボット)や「エボルタ」(パナソニックの電池キャラクター)など数々の個性的な人型ロボットを開発してきた高橋氏は「ロボット時代の創造」をテーマに講演。開発してきたロボットたちを紹介するとともに、ロボット製作におけるエピソードを披露した。「以前は『必要なものを生む』ことで不便などを解消するために新たな産業が生まれてきた。これからは『不必要なものを売る』考え方が必要。ロボット掃除機のルンバや、YouTubeなども最初は遊びとして生まれた。それらが普及することで産業化してきた。人型ロボットも同じだ」と高橋氏は話す。

 また高橋氏の開発するロボットは独特の柔らかい曲線を描くデザインのものが多いが、設計はほとんど手描きだという。「既存の設計ツールを使うとどうしても四角いありきたりのロボットになってしまう。実際にデザインの中に部品をどう納めるか、を組み立ててはやり直す試行錯誤をしてユニークなロボットを作り上げている。そういう意味ではより自由度が高くシミュレーションできる解析ソフトがあれば利用するかもしれない」と高橋氏は述べている。

 一方、石原氏は「数値風洞の最前線」として、風力発電所の事例などを紹介した。同イベントでは、講演のほか40以上のセッションセミナーなども行われ、2日間で約1400人が参加する見込みだ。

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