フリーで使える解析ツールを筆者が徹底検証して紹介! 簡単な形状の部品なら、実務レベルの解析が十分できる。
前回は片持ちばりの挙動の手計算を行っていただきました。どうでしたか? うまく計算できたでしょうか。単位系も含めてバッチリの答えを出すことができたでしょうか。
ここであきらめてはダメです。少々厳しいいい方ですが、片持ちばりの手計算もできない人には解析ソフトを使う資格がないと思ってください。「手計算なんて、やらなくていいために、解析ソフトがあるんじゃないか」と思うのは当然だと思いますが、ドレミを知らずしてピアノを演奏することはできないのです。音を出すことはできますが、演奏はできません。
最近の設計者向けのCAEソフトはとてもよくできていて、カンタンに答えを出すことはできますが、操作方法を習得しただけで、使える解析結果を出せる人は、よほど工学的なカンのいい人なのです。そしてその人たちは、片持ちばりの公式など朝飯前に理解している人たちなのです。
連載もここまでくると、そろそろ実際の解析ソフトを使って解析してみたくなるころでしょう。これから有限要素法の心臓部を説明しようと思っていますが、実際に解析ソフトを使ってみることによってより理解が深まると思います。
しかし、会社に自由に使える解析ソフトがあればいいのですが、そういう恵まれた環境にいる人たちだけではないでしょう。自分で購入するにしても解析ソフトは高額です。
そこで今回はフリーで使える解析ソフトとそれを使うためのツールを紹介しましょう。どのツールもいくつかの制限はありますが、基本的にフリーです。僕が使ってみた感想ですが、簡単な形状の部品なら十分実用レベルです。
前置きが少し長くなりました。それではスタートです。
今回の連載では、フリーのソフトウェアを紹介します。スパイウェアやアドウェアが含まれていないとも限りませんので、インストールは自己責任で行ってください。僕が調べた範囲では悪質なものはありませんでしたが、お約束として。
またソフトウェアをダウンロードする時点で電子メールアドレスなどの個人情報を入力する必要があるものがあります。マーケティングデータとして使用される可能性がありますので、個人情報の入力には、対策を取ってください。
さらにソフトウェアのインストールについての詳細は省略します。とはいっても基本的にはほかのソフトウェアと何ら変わりませんので、頑張ってやってみてください。ちょっと上から目線でエラそうですが、「何もしないと、何も身につかない」のです。
それと今回の内容の対象OSはWindows XPの32bit版、SP3です。今回紹介するフリーソフトの中にはLinux版とかが存在するものもあるので、注意してダウンロードしてください。
最近の設計者向けのCAEソフトは非常にカンタンに使うことができます。解析の手順や内容はほとんどブラックボックス状態です。さすがにフリーでは、販売されているCAEソフトほどスマートな環境を再現することはできません。ここでいう「スマートな環境」とは3次元CADでモデルを作って、解析する条件を設定すると解析ができてしまうことをいいます。まさにブラックボックスですね。
今回、解析のプロセスを分解し、それぞれのプロセスに見合ったフリーソフトを紹介します。解析のプロセスがソフトごとに明確になるため、解析の流れがハッキリと分かるようになります。
前回の連載で使用した片持ちばりを解析モデルとして使用してもいいのですが、形状は羊羹(ようかん)のような棒一本……。これでは面白みに欠けますし、皆さんが設計している部品はもっともっと複雑な形状をしています。有限要素法は形状があってナンボです。
「形状を作る」といえば3次元CAD。そこそこ使えるフリーの3次元CADなんてあるのか? と思いつつ探してみました。フリーの3次元CADとして、GoogleのSketchUpは有名ですが、形状を汎用的なフォーマットでエクスポートすることができません(有償版のSketchUp Proはエクスポート可能)。
そこで見つけたのが、AlibreDesign(アリブレ・デザイン)というソフトウェアです。
いくつかの個人情報を入力しなければなりませんが、ダウンロードはサクッと終わります。
さらにダウンロードまでの過程で以下のようなページがあります。
このソフトのユーザーマニュアルは何と500ページ超えの超大作!! となっています。ただし英文です。
インストールについては、PDFのマニュアルが見つかりました。
AlibreDesignはフリーではありますが、インストールした日から30日間はProfessional版として試用できます。30日が経過すると無償版に変わり、驚くほど機能は大きく制限されて、本当に基本的なコトしかできなくなります。まぁ、無償なんで仕方がありませんが……(驚きの機能制限については、後述)。
ひとまず、日本語メニューで、3次元形状を作成する機能もひととおりそろっていますので、ちょっとした部品の形状を作るのには十分でしょう。
3次元CADの使い方は、各自、習得してください。すでに3次元CADを使っている人は、コマンドを対比させながら使ってみると、すぐに習得できると思います。3次元CADを使っていない人は、これを機会にぜひ3次元の世界を体験してみてください。3次元CADの操作方法なんて、どのCADでもほとんど同じです。よってAlibreDesignで習得した3次元形状作成方法は、ほかのCADでも十分活用できます。
AlibreDesignには丁寧なチュートリアルも付いていますので、ぜひチャレンジしてみてください。図2に示したL型ブラケットは僕が10分くらいでモデリングしたものです。50歳を超えた老眼のオッサンでもできたのですから、皆さんにできないハズはありません!
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