「大阪・関西万博」では、3Dプリント技術を活用した未来の暮らしの提案や社会課題の解決に向けたさまざまな取り組みを発見できる。
製造業を中心に活用が進む3Dプリント技術が、“万博”という公共の大舞台で生活者の未来とつながっていく――。「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」では、3Dプリンタによる循環型製造や家庭内培養肉の提示など、モノづくりの世界を支える先端技術が、人びとの生活空間や社会基盤と結び付く実証展示として可視化されている。
大阪大学大学院工学研究科、島津製作所、伊藤ハム米久ホールディングス、TOPPANホールディングス、シグマクシス、ZACROSの6者が運営パートナーとして参画する「培養肉未来創造コンソーシアム」は、大阪ヘルスケアパビリオンのミライの都市エリアに出展している(詳細はこちら)。
ブース名称は「家庭で作る霜降り肉」で、3Dバイオプリント技術により作られた培養肉の実物や、細胞を培養して肉を作る装置「ミートメーカー」のコンセプトモデルなどを展示する。
「お肉は『店で買うもの』から、『家庭で作るもの』へ」という提案を通じ、未来のキッチン像を表現。ミートメーカーを用いて、霜降りステーキの肉を個人の好みに合わせて家庭で作れるという未来像を提案する。2025年7月8日には、焼いた培養肉の香りを体験できるイベントも予定されている。
慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI) 環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターを中心とする共創チームは、2機のロボットアームで構成される3Dプリンタ「双鶴」を、日本政府館のファクトリーエリアに常設展示している。双鶴はごみや騒音の発生を抑え、省電力での製造を可能にする循環型モノづくりシステムだ(詳細はこちら)。
展示では、藻類由来バイオプラスチックを用いた3Dプリント製スツールを実際に設置し、来場者が座って体験できる。また、製造からリサイクルまでを一体化した「未来のスマート工場」のビジョンを披露する。
約10年にわたる研究成果を生かし、産官学連携による持続可能な製造モデルを発信する狙いだ。スツールはリサイクル前提で設計されており、会期中には製造実演も予定されている。
EXPOナショナルデーホールで使用される演台および司会者台は、3Dプリンタで製作されている。建設現場から回収したPP(ポリプロピレン)バンドを再資源化し、材料として活用した。手掛けたのは鴻池組とスワニーだ(詳細はこちら)。
PPバンドを再資源化したリサイクルPPペレットとフィラー材を混練した材料を基にし、3D Systems製の大型3Dプリンタ「EXT Titan Pellet」で製作した。万博の公式ロゴマークとデザインエレメントを取り入れた意匠部も3Dプリンタで造形されており、材料として旭化成の環境配慮型素材(セルロースナノファイバー)が使われている。
この演台と司会者台は、開幕前の式典で既に使用されており、会期中もさまざまな場面で活用される。
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