生産スケジューラ担当者の視点からすると、ベトナム地域では、まだ生産効率の向上ということに対し、意識が低い感じがする。まだまだ労働賃金が低く、労働集約型の工場が多いため、人的運用で解決するケースが多いからだ。
しかし、チャイナリスクの高まりからベトナムへの進出が進む中、新たに建設される工場では、生産スケジューラの導入検討が進んでいる。中国での導入経験から考えてみても、当初より導入ペースは早いと感じている。
当社(アスプローバ)の顧客企業で、世界的に生産分散を図っている大手白物家電メーカーの担当者は「世界的な分散生産の潮流の中、日本本社としてはローカル工場の在庫はもちろん、その能力や進捗状況も正確に把握できないと、グローバルなオペレーションができない」と話す。今後はベトナムでも生産スケジューラのニーズはさらに広がりを見せるものと考えている。
生産スケジューラのニーズそのものは高まっているものの、実際に導入して成果を出すということに関しては、ベトナム地域の工場は、中国の工場以上に難敵だと感じている。
ベトナム工場の労働者には高学歴の人間がいないということが1つの要因だ。そのため、労働人口が若く、人口が多いという利点がある一方で、仕事上での協力や、ビジネスマナーという点について十分に教育されていない人がほとんどだ。実際の製造ラインでも、勝手に生産順番を変えてしまうなど、トラブルも多い。
当社が長い海外ビジネスの中で習得してきた海外工場におけるシステム導入の手法は次のようなものだ。これらの活動を地道に進めていくことが、結果として効率的な製造現場を作り上げる鍵だと考えている。
状況によっては長く掛かる場合もあるが、この3つのステップにおいて、日系製造業の力になっていきたい*1)。
*1) なお、アスプローバでは、サプライチェーンの重要性や製造ラインの協調性を教育する手段として、ビールゲームを推進している。米国MIT(マサチューセッツ工科大学)で開発されたシミュレーションゲームであるが、ゲームの中で製造ラインの協調性がいかに重要かを現場に認識させるために、ベトナムでも活用されている。>>ビールゲーム(アスプローバ)
独立系中堅・中小企業の海外展開が進んでいます。「海外生産」コーナーでは、東アジア、ASEANを中心に、市場動向や商習慣、政治、風習などを、現地レポートで紹介しています。併せてご覧ください。
アスプローバ株式会社
副社長 藤井賢一郎(ふじい けんいちろう)
半導体工場のSEとして生産管理システムを開発。営業に転じてからは、製造業のお客様に向けたシステム提案一筋に従事。生産管理パッケージソフトウェアを100社以上に導入した他、生産計画ソフトウェアの採用が300社以上に達した実績がある。2012年まで、アスプローバチャイナ社の総経理として活躍、2013年からは、チャイナ・プラスワンビジネスとしてタイに赴任予定。
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