タイと中国の「外資優遇政策の変更」と製造業タイから見た製造業の今(2)(1/2 ページ)

タイには多数の日本企業が進出している一方で、地場の製造業も立ち上がってきている。タイの現状はどうなっているのか。タイ駐在の藤井氏が見た製造業の姿を連載形式で報告する。

» 2013年04月18日 10時40分 公開
[藤井 賢一郎/アスプローバ,MONOist]

 タイ政府は昨年(2012年)の最低賃金アップの政策に続いて、これまで外資としてタイに投資してきた企業への政策を変更する。これまでタイでは、地域差是正のためにバンコクからより離れた地域でのより手厚い優遇税制の適用など、分かりやすい政策がとられてきた。この段階で聞こえてくる内容は、中国同様に、より付加価値の高い製造業への優遇策である。ご存じの通り、同様の政策で先行する中国政府は、既に「労働集約型の製造業から付加価値創出型の製造業」への舵(かじ)を切っている。

 そのような環境変化の中で「生産ラインはどう変わるのか?」「それをサポートする生産スケジューラはいかに変貌を遂げるか?」といった視点で今回はレポートしたい。

photo セル生産の導入で効率化を図る工場

稼働率の向上から生産の平準化へシフト

 労働集約型のモノづくりから脱却するためには、労働者1人当たりの生産性を高めなければならない。中国・華南地区にある当社(アスプローバ)ユーザー工場では、作業員ごとの生産能力を細かく管理登録した上での生産スケジューラの利用といった「生産の平準化」についての質問が相次いでいる。

 これまで自動車産業を頂点としたタイの製造業では“納期回答を中心とした生産スケジューラ”の利用であったが、中国工場の事情を見ると今後、当社製品のような“生産効率の向上を目的とした生産スケジューラ”の利用にシフトしていくと予測できる。

photo 生産効率の向上を目的とした生産スケジューラへシフト

 海外工場では、全ての工程での計画策定は難しい。ではどうしたらよいだろうか?

 TOC理論(エリヤフ・M・ゴールドラット博士)の考えを借りれば、ボトルネック工程の解消こそ全体最適への近道という結論になる。当社(アスプローバ)は2013年、海外工場向けに単工程スケジューラの開発に踏み切る。実際、こうした単工程適用の実例は、これまでの海外工場の当社製品の利用に関して最も成功しているパターンともいえる。単一工程であれば、マスターのメンテナンスも比較的容易であり、生産実績の収集にも難易度は高くない。今後、高付加価値化・生産効率化が問われる海外工場の生産ラインの中で、機械加工工程・設備システムの稼働率向上にも大いに寄与できるだろう。

photo ボトルネックのプレス工程を生産スケジューラで最適化
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