さて、ロボット教材を使った学習の利点は何でしょうか。それは、ロボットを作り・動かすという体験を繰り返しながら、自分の考えやイメージしている動きに近づけていくプロセスを経験できる点にあると思います。これは先ほど紹介した実習を通じて筆者が感じたことです。
いい年をしたオッサン(筆者)でも、自分が作ったロボットが思い通りに動いたらうれしくなり、さらに速く走らせたいという欲求にかられました。逆に、見当違いの動作をしたら「何でだろう?」と、自分が考えた動作手順を見直し、プログラムを書き換えて再度トライするという気持ちが自然とわき起こりました(それと、「他のメディアの記者の方に何としてでも勝ちたい!」という変なプライドも!?)。
例えば、「決められた距離(120cm)を走らせるにはどうしたらいいか」を考える際、タイヤの円周(1回転分の距離)を求めることが重要になります。体験会で使用した教育版 EV3のタイヤの直径は5.6cmです。まず、タイヤの円周を求め、120cm走らせるにはタイヤを何回転させたらいいかを計算します。
走らせたい距離 ÷ (タイヤの直径 × 円周率) = タイヤの回転数
小学生のときに学んだ知識で計算できるはずです。しかし、筆者が小学生のころを振り返ってみると、教科書やテスト用紙に向かいながら「円周率とか円周の出し方(公式)なんて覚えても、日常生活で使う機会ないじゃん!」と抵抗感を抱いていました。そして、そのうち自然と「公式は、テストで良い点数を採るために覚えるものだ」というふうに考えが切り換わっていました……。
教育の在り方にモノ申すつもりはありませんが、例えば、当時、筆者が受けていた授業が、「さぁ、好きな距離を決めて、自分が作ったロボットを走らせてみましょう!」という内容だったら、円周率や円周の求め方に対する見方が変わっていたような気がします。
本当の理解は、実体験から得られる
米マサチューセッツ工科大学名誉教授のシーモア・パパート(Seymour Papert)氏は、このように述べています。
よく「カラダで覚える」という言葉を耳にしますが、確かにその通りなのかもしれません。実体験を通じ、理解を深めることで自然と論理的思考が養われていく……。もしも、そのような経験を子どものうちにできていたら、筆者も理系に進んでいたかもしれません(!?)。他にも、ロボット教材による学習は、創造力や問題解決力を養うのにも適しているそうです。
今回、記者向け体験会を開催してくれたアフレルは、2013年7月までの期間、全国100箇所で「アフレル EV3 キャラバン100」を実施します。既に、50箇所での開催が決定しており、残り50箇所を募集中だそうです。また、同年11月10日、都内某所で教育版 EV3を用いた技術コンテスト「EV3 Smart Design Contest」の開催も計画しているとのこと。ご興味のある方は、アフレルに問い合わせてみてください。
なお、アフレルは、5月8日に教育版 EV3の予約販売を開始し、8月上旬に予約分の“先行出荷”を行うそうです(本来の発売日は9月上旬)。予約特別セットの内容と価格は、以下の通りです(表2)。
セット名 | 内容 | 価格(税別) |
---|---|---|
Aセット | 教育版 EV3 基本セット+教育版 EV3 ソフトウェア(シングルライセンス) +DCアダプター+プログラミングガイド |
5万9000円 |
Bセット | Aセット+EV3 拡張セット | 7万2600円 |
Cセット | Bセット+通信セット(IRセンサー、IRビーコン、Wi-Fiドングル) | 8万6200円 |
表2 アフレル EV3 予約セット |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.