日産自動車が海外で生産する電気自動車「リーフ」のリチウムイオン電池に、JX日鉱日石金属の三元系正極材料が採用されることが明らかになった。
JX日鉱日石金属は2012年9月20日、磯原工場(茨城県北茨城市)で建設していた、車載リチウムイオン電池向け正極材料の新製造設備が完成したと発表した。これにより年間の生産能力は、従来の300トンから5000トンに拡大する。同工場で生産した正極材料は、日産自動車が海外で生産する電気自動車(EV)「リーフ」のリチウムイオン電池に採用される。
JX日鉱日石金属が磯原工場で製造している正極材料は、コバルト、ニッケル、マンガンを使用する三元系と呼ばれるものである。同社の三元系正極材料は、独自に開発した湿式の製造法によって正極材料内における構成元素の分散性を高度に制御して、高い均質性を実現できるという。電池短絡の原因となる異物混入を防ぐために、金属原料から正極材料に至るまでの一貫製造プロセスを採用したことも特徴となっている。
日産自動車が国内で生産しているリーフは、同社の子会社であるオートモーティブエナジーサプライ(AESC)のリチウムイオン電池を搭載している。AESCのリチウムイオン電池は、マンガン系の正極材料と、ラミネート型の電池セルが特徴だ(関連記事)。北米や欧州で販売されているリーフも、現時点では国内で生産しており、リチウムイオン電池はAESC製のものを使用している。
リーフの海外生産は間もなく始まる予定である。2012年末までに米国テネシー州のスマーナ工場で生産を開始し、2013年には英国のサンダーランド工場でも生産を始める。
これらの海外で生産されるリーフが三元系正極材料を採用するということは、マンガン系の正極材料を用いている現行のAESCのリチウムイオン電池を搭載しないということを意味する。つまり、三元系正極材料を用いるメーカーのリチウムイオン電池が採用される、もしくはAESCが三元系正極材料を用いたリチウムイオン電池を新たに開発している、という可能性が考えられる。
三元系正極材料を用いるリチウムイオン電池メーカーとしては、パナソニック(旧三洋電機)が知られている。
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