上は入口から出口に向かってスムースに圧力が上昇(青〜緑)しています。一方、低い流量では羽根出口付近で圧力が上昇しています(図5.6:黄色の領域) 。
流れの速度の向きを矢印で、速さを矢印の大きさで表現しています。上は羽根と羽根の間を空気がスムースに流れていますが、下の低い流量では羽根と羽根の間で流れが大きく渦を巻いていることが分かります。この状態になると空気の流れがこの渦に阻害されますので、羽根の性能が低下してしまいます(図5.7)。
左が高流量、右が低流量です。ストリームラインとは、空気の流れの軌跡を表示する手法です(図5.8)。
車体などの静止した物体の流れの実験では煙を発生させて同様に流れを可視化する方法もありますが、ターボ機械のように高速で回転する羽根の間を可視化することは困難です。シミュレーションでは、このような可視化処理も可能になります。この結果では、低流量の結果で、前の速度ベクトルでは平面上の矢印で表現されていた逆流渦を3次元的に確認することが可能です。
以上、流体解析によるシミュレーションでの「試験結果」について、いくつかの手法をご紹介しました。コンタ図、速度ベクトル図、ストリームラインの例を示しましたが、これらはほんの一例に過ぎず、アニメーションの活用による流れの可視化や、流体解析を利用した設計現場では、数多くのシミュレーションを実行した後に自動処理を使って定型の画像、グラフ、アニメーションなどを出力する方法なども採用されています。
実験においてもシミュレーションにおいても共通していえることは、出力された結果をどのように評価・判断してどのように設計改良を行うかということであり、これにはやはりアナログ的な経験や勘が重要になるということです。流体解析は実験設備の構築や計測にかかるコストを低減し、数多くのバーチャルな実験をコンピュータ上で(場合によっては書類を作りながらノートパソコン上で)行うことが可能ですが、データだけが膨大になってしまい、その結果を活用できなければ逆にコストが増大してしまいます。
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最近では流体解析の結果から、シンプルに「羽根のこの個所をこの範囲で動かして性能を上げる」という命令を入力することで、コンピュータに改良設計を行わせる手法も活用され始めました。これは「最適化設計」や「逆解析」などと呼ばれます。最終回の次回では、この「最適化設計」についてご紹介します。
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