デジタルツインを実現するCAEの真価

CAEは高度化と簡易化に分かれる、生産技術CAEも充実DMS2015リポート【CAD/CAE編】(1/4 ページ)

「第26回 設計・製造ソリューション展(DMS2015)」では、VDI環境でのCAE実施や、高度な解析が社内でも使えるようになるなど、一層CAEの利用範囲の拡大が感じられた。

» 2015年07月21日 12時00分 公開
[加藤まどみMONOist]

 2015年6月24〜26日、東京ビッグサイトで「第26回 設計・製造ソリューション展(DMS2015)」が開催された。

 高度な解析が、ハードウェアの性能向上やスパコン利用などにより身近になってきた一方、設計部門以外でのタブレット端末によるCAE活用やシンクライアントの採用など、CAEの利用方法は広がりをみせていた。また、溶接や鍛造をはじめとする生産技術関連の提案も多くみられた。


容易に使える基板専用ツールをリリース

 ソフトウェアクレイドルでは、新製品の基板専用リアルタイム熱シミュレーションツール「PICLS」を展示していた。このツールは、解析に不慣れな技術者でも簡単に基板の部品の配置を変更して、熱の分布を見ることができるツールである。各部品やサーマルビア、銅箔厚、配線などの検討が行える。また、ドラッグ&ドロップでの操作が可能で、熱の変化をすぐに確認できるのが特長。

 メカ設計の段階で熱解析を実施すると、レイアウトを変えられず、ヒートシンクの追加を行うなど、どうしても“後からの対策”になってしまう。「PICLSによって最初のレイアウトの時点で手戻りを避けられれば」(説明員)という。ソフトウェアクレイドルでは、同じく手軽にファンの翼形状を検討できるオプションツールも提供している。「(従来の)ソフトの方は大規模計算、ハイエンドの方向に向かっている。一方で普段解析ツールをあまり使ってない人向けに使いやすいツールの提供も進めている」(説明員)。

パーツを配置するとその場で熱解析図が出る 図1 パーツを配置するとその場で熱解析図が出る

 ソフトウェアクレイドルのブースで興味深かったのが、流体の可視化空間をVR(Virtual Reality)ヘッドセット「Oculus Rift」を使って疑似体験するというもの。流れの矢印と一緒に上空やビルの間を通り抜けていく様子を疑似体験できる。「面白い使い方があれば取り入れていきたい」(説明員)とのことだ。来場者からは、部屋の中の照度分布を中にいる人の視点で見てみたいという声もあったそうだ。また、「扇風機と連動させて風の強弱を感じられると面白いかも」(説明員)と話していた。

浮遊感が想像以上にすごかった。矢印と一緒に飛んで行くのがちょっとシュール 図2 浮遊感が想像以上にすごかった。矢印と一緒に飛んで行くのがちょっとシュール

 ソフトウェアクレイドルのブース内でもう1つ面白かったのが、WindStyleが展示していた「WindMap」だ。日本大学 生産工学部 津田沼キャンパスに設置された風向・風速計のデータをインターネットを介して取得し、約300×500mの敷地内に吹く風の様子をリアルタイムで可視化していた。

日本大学 生産工学部 津田沼キャンパスの風の様子をリアルタイムで可視化した「WindMap」 図3 日本大学 生産工学部 津田沼キャンパスの風の様子を「WindMap」でリアルタイムで可視化した

 これは、あらかじめCFD解析した32方向のビル風データベースを用意。基準点となる風向・風速計のデータが分かると、データベースから任意点におけるそのときの風向・風速・風圧を計算できるという。応用先として、ビル風のリアルタイム可視化システムや、効率的な自然換気、屋外スポーツにおける風の影響を可視化するといったエンターテインメント利用、また自動運転車の制御やドローンの飛行ルート規制などが考えられるという。

スマートフォンで解析!

 汎用シミュレーションソフトウェア「COMSOL Multiphysics」を提供する計測エンジニアリングシステムでは、目的に特化した解析アプリケーションが作れる機能を紹介していた。COMSOL Multiphysicsバージョン5.0では「Application Builder」という機能が追加された。この機能によって、COMSOLのユーザーは、特定の目的に応じた簡単な解析モデルを作ることができる。ボタンやパラメータ入力窓を自由に配置して、簡単な解析を行えるようにしたり、ビュワーにしたりすることもできる。これをWebアプリケーション化して「COMSOL Server」上にアップロードし、Web経由で対象となる人に使ってもらうことも可能だ。計算は全てサーバ上で行われるため、タブレット端末や(画面は小さいものの)スマートフォンでも解析が行える。

 製造部門や営業、フィールドサービスなど、解析にあまり関連のなかった部署も解析を活用できるようになる。例えば、技術営業時に「iPad」を使い、形状を変更した場合の機能の変化などをその場で検討して見せることも可能だ。

 図4の音叉のプログラムでは、440Hz(ドの音)の音叉の変位を計算したり、逆に500Hzの音叉を作りたい場合どのような外形寸法にすればよいかといったことが計算できたりする。計測エンジニアリグでは、Application Builderのハンズオンセミナーを2015年7月15日、8月5日に開催するとのことだ。

音叉の解析アプリケーション 図4 音叉の解析アプリケーション
コルゲート付き円形ホーンアンテナの解析アプリケーション 図5 コルゲート付き円形ホーンアンテナの解析アプリケーション
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