“かんばん方式”にまつわる誤解・曲解・勘違い:こうすればうまくいく生産計画(6)(5/5 ページ)
筆者は、かんばん方式を導入しようとして、かえって生産状況を混乱させてしまうケースを何度か見掛けた。どうも、トヨタのまねをしようとして、そこに必要な前提条件を忘れてしまうために起きているらしい。組み立て加工中心の繰り返し受注生産か見込み生産で、需要が安定しており、季節性も少なく、製品サイクルも長く、そして(ここが重要なポイントだが)営業と生産が同じ基準生産計画にコミットして動ける会社ならば、かんばん方式は十分魅力的だ。
しかし、あなたの会社の販売力が弱く、商品需要は気まぐれで、個別受注的な要求が強く(あるいは年中製品が入れ替わり)、製造原理がロットないしバッチ型で、しかもサプライヤに対する影響力も弱いならば、慌てて飛び付く前に少し考え直した方がよい。
トヨタ生産方式はこれまで権威を持って仰がれてきた。今回(2008年秋に起こった米国発金融危機)のトヨタの苦境が、周囲にどのような反響を呼んでいるのか、正確なところは分からない。しかし、これを機会に、立脚しているビジネスの前提条件の違いを皆が再検討すべきときである、と筆者は思う。思考停止ほど、ジャスト・イン・タイム思想から懸け離れたものはないのだから(連載「こうすればうまくいく生産計画」の目次はこちら)。
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