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アトピー性皮膚炎の皮膚バリア機能の形成に関わる因子を発見:医療技術ニュース
ロート製薬と東京大学は、アトピー性皮膚炎患者の皮膚バリア機能形成に関わる因子KPRPを発見し、その機能を解明した。アトピー性皮膚炎の重症化や発症の予防につながることが期待される。
ロート製薬は2019年7月19日、東京大学との共同研究により、アトピー性皮膚炎(AD:Atopic dermatitis)の皮膚バリア機能形成に関わる因子KPRPを発見し、その機能を解明したと発表した。
研究では、ADの重症度とKPRP遺伝子の一塩基多型との相関を解析。その結果、rs4352920遺伝子座にてTTの遺伝子型を持つ人が、健常またはADが軽症の患者では29%だったのに対し、中程度あるいは重度のAD患者は50%だった。また、χ2乗検定では、TT遺伝子型を持つ人とAD重症度は有意に相関しており、その重症化リスクは2.52倍だった。
次に、健常皮膚とAD患者の皮膚でKPRPの発現を確認したところ、ADに罹患した部位ではKPRPの発現が有意に低下していた。続いて、AD罹患部位の炎症に関与するIL-4、IL-13、インターフェロンγをヒト表皮ケラチノサイトに添加すると、KPRP遺伝子が濃度依存的に発現低下していることが確認された。さらに、KPRPが人の健常皮膚の角層直下にある3層の顆粒層のうち、第2層目に一定間隔で局在すること、KPRPが細胞接着に関わる構成因子と相互作用があることも分かった。
今回の研究により、KPRPがADの重症化を招く可能性がある因子として特定された。KPRPを介して皮膚表面の角層バリア機能を高めることにより、アトピー性皮膚炎の重症化や発症の予防につながることが期待される。
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