日本製造業の固定資産はどれだけ多い? 国際比較で見えた“重い構造”小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(50)(3/3 ページ)

» 2026年08月24日 08時00分 公開
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製造業の知的財産生産物の国際比較

 最後に研究/開発、ソフトウェアなどの無形資産(知的財産生産物)の国際比較を見ていきましょう(図6、図7)。

photo 図6:日本の製造業の知的財産生産物の固定資産残高(労働者1人当たりの為替レート換算値)[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成
photo 図7:日本の製造業の知的財産生産物の固定資産残高(労働者1人当たりの対付加価値比)[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 知的財産生産物の残高を比較してみても、日本は非常に高い水準です。労働者1人当たりでは米国に抜かれ、ドイツにはかなり追い付かれていますが、相対的に高い水準を維持していますし、対付加価値比では90%と圧倒的です。日本の製造業では、研究/開発が活発で、その資産残高も際立って積み上がっていることになります。

 これらが対付加価値の水準で特に高いのは、研究開発の成果がうまく付加価値につながっていないことも意味しているのでしょう。稼ぎ(付加価値)の割に投資が多いものの、付加価値が増えていません。

日本の製造業の固定資産の特徴

 今回は、製造業の固定資産残高について、種類別の国際比較をご紹介しました。日本の製造業では、相対的に投資が多く、どの固定資産でもその資産残高が大きく積み上がっている状況となっています。

 「日本の製造業は投資が少ない」といった印象を持つ方もいるかもしれませんが、統計データで確認する限りはむしろ「日本の製造業は投資が多いのに付加価値が増えていない」という状況となります。そして、固定資産残高が多いということは、その維持費用ともいえる固定資本減耗もかさみ、企業自体や労働者の取り分も目減りすることを意味します。

 実際に、立派なオフィスや工場を持っていても赤字続きの企業が多くあります。固定資産への投資は、企業経営上は従業員の雇用とともに、大きな負担となっています。日本企業は他国よりもその負担が大きいことも特徴といえそうです。共通のフレームワークによる統計データの国際比較によって、このように日本企業の特徴が可視化されるのは大変興味深いことではないでしょうか。

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⇒前回連載の「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら

筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

 慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

 医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。

photo 小川氏初の著書が出版!

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