日本製造業の固定資産はどれだけ多い? 国際比較で見えた“重い構造”小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(50)(1/3 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は、日本の製造業の固定資産について分析します。

» 2026年08月24日 08時00分 公開

 前回は、経済協力開発機構(OECD)のデータベースを基に「日本製造業の投資の種類と規模」について紹介しました。日本の製造業は、建物/構築物、機械/設備、知的財産生産物のいずれでも高い水準の投資を継続してきましたが、付加価値の割に投資は多いものの、その投資によって付加価値が増える方向には変化してこなかったことが分かりましたね。

 さて、今回は、前回と同じくOECDのデータベースを基に、日本の製造業の固定資産の種類と規模について紹介します。

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日本製造業の固定資産の種類と規模

 経済統計における投資とは、機械/設備や研究/開発など、生産能力を高める固定資産への支出を示します。投資によって固定資産を蓄積し、生産能力を高めて稼ぎである付加価値を増やしていくのが、企業活動の基本的な姿となります。

 前回は、日本の製造業が投資の割に付加価値の増加につながっていない実情を紹介しましたが、今回は、この投資の結果、蓄積した固定資産残高がどのような規模に達しているのか、固定資産の種類ごとに国際比較していきます。

 固定資産残高は、投資によって増えますが、逆に経年劣化や損耗によって減っていきます。このように毎年目減りする固定資産価値を企業会計では減価償却費、SNA(System of National Accounts)では固定資本減耗と呼びます。さらに、SNAでは固定資産残高は時価によって再評価されますので、次のように評価されます。

固定資産残高(今期末) =
固定資産残高(前期末) + 総固定資本形成 - 固定資本減耗 + 再評価(価格変動分) + その他の資産変動

 その他の資産変動は、災害などの通常の使用以外で損耗した資産価値などです。

 日本は投資が多いので、固定資産残高も増えてきたと推察されますが、どのような状況だったのか確認するところから始めてみましょう(図1)。

photo 図1:日本の製造業の固定資産残高[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 固定資産は大きく分けて工場、オフィスビルなどの「建物や構築物」「機械や設備」、研究/開発やソフトウェアなどの「知的財産生産物」となります。

 日本の製造業の場合は、長期的に見れば固定資産残高が緩やかに増加してきました。種類別に見ると、建物/構築物と機械/設備は横ばい傾向が続いていて、知的財産生産物はやや増加してきたような推移となっていますね。また、リーマンショックの2008年にいったんピークとなった後は、2009年にガクッと落ち込んでいる様子が確認できます。

 ここで前回の記事も参照していただきたいのですが、リーマンショックの影響が大きかった2009年には日本の製造業では投資が大きく減りました。その結果、ストックである固定資産残高も、投資によって積み上がる分が減り、差し引かれる固定資本減耗が超過したので、前年より目減りしました。このように、固定資産残高とは、毎年投資によって増える分と、損耗によって減る分が差し引きされることになります。

 日本ではそもそもバブル期に積み上げた固定資産残高が大きいため、固定資本減耗は他国よりもかなり多いのが特徴でした。その結果、他国に比べてかなり多い投資をしていても、固定資本減耗と相殺し、固定資産残高としてはそれほど増えず、横ばいに近い傾向が続いてきたことになります。

 ただし、知的財産生産物は投資が拡大していたため、固定資産残高も拡大していることが確認できますね。知的財産生産物は、研究/開発、ソフトウェアなどの無形資産です。一見すると、建物や機械などの有形資産で生じる損耗はないように感じるかもしれませんが、このような無形資産は「陳腐化」によって価値が減るものとして固定資本減耗の計算に反映されているようです。

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