リコーはインクジェット事業拡大のため、厚木事業所に新棟を建設する。「人とAIが共創する次世代工場」として2028年度上期に完成し、ヘッド生産能力を2倍以上の引き上げを目指す。ペロブスカイト太陽電池など機能印刷領域も育成し、新たな成長の柱とする。
リコーは2026年9月18日、東京都港区のリコージャパン 本社事業所において、商用印刷や産業印刷などを担うグラフィックコミュニケーションズ(RGC)事業に関する戦略説明会を開催した。
リコーは中期経営戦略において、RGC事業を重要事業の1つと位置付けている。その中核となるインクジェット事業のさらなる成長に向け、同日、インクジェットヘッドの生産拠点である厚木事業所(神奈川県厚木市)の敷地内に新棟を建設することを発表した。
リコー コーポレート上席執行役員 リコーグラフィックコミュニケーションズビジネスユニット プレジデントの宮尾康士氏は「厚木新棟は当社の成長戦略を支える中核投資となる。長年培ってきた精密モノづくりの強みに、自動化やAI(人工知能)を融合させた『人とAIが共創する次世代工場』として生産基盤を強化する」と述べた。
リコーのRGC事業は、2025年度の売上高で2840億円で、全社売上高の10.9%を占める規模にある。RGC事業は現在、「商用印刷」「産業印刷」「機能印刷」の3つの領域を注力分野として掲げている。
事業売上高のうち、86.2%(2449億円)を構成するのが、チラシやカタログ、書籍などの紙媒体を対象とする商用印刷領域だ。トナー機を中心に約5万社の顧客基盤を持つ。市場全体ではペーパーレス化が進む一方で、発注側からの多品種小ロット化やパーソナライズ化の要望が高まっており、商用デジタル印刷の年間印刷量は年平均成長率(CAGR)5.5%で拡大している。
中でも、ホワイトやゴールド、シルバー、ネオンカラーなどの多彩なスペシャルカラー(特色)を備えた、ミドルレンジのデジタル印刷機「RICOH Pro C7500シリーズ」は、世界の販売シェアで約39%で、世界1位となっている(いずれも同社算出)。
宮尾氏は「先進国では高速インクジェット機による需要が伸びており、自動化や省人化、可視化、省エネなどのソリューション提供を具体化していく。インドや中国などの新興国では全方位的に市場が伸びていくと予想しており、地域や顧客の特性に沿った商品とカスタマイズ戦略で市場を拡大する」と戦略を語る。
産業印刷領域はサイングラフィックや布製品、パッケージといった製品そのものへの印刷を対象とし、RGC事業全体の13.7%(390億円)を占める。リテール向け商品などの細分化によりニーズが拡大しており、産業デジタル印刷の年間印刷量はCAGR 6.7%での堅調な成長を見込む。プリンタメーカーに対してプリントヘッドやプリントシステムの設計支援を提供するビジネスモデルであり、宮尾氏は「ペーパーレスなど紙特有の市場圧力がなく、インクジェットを軸に既存事業を伸ばし新規事業を拡大していく」と述べた。
さらに、2026年度から新たに注力分野として追加したのが、機能印刷領域だ。絶縁性や熱伝導性など特定の機能を持つ材料をインクジェット技術によって吐出し、製品そのものを形成する次世代事業である。同社はこれを新たな成長の柱として育成する方針である。ペロブスカイト太陽電池への取り組みなど、具体的な戦略については後述する。
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