触媒の性能を最大限に引き出すには、反応形式(気固、気液固など)や反応条件(熱、圧力など)に応じて、最適な反応器を選択する必要があります。ここでは気固触媒反応器を例に紹介します。
固定床反応器は、筒状の容器に触媒ペレットを充填し、その中をガスが流れる形式です。構造がシンプルで、触媒が固定されているため摩耗が少ないという利点があります。流れは理想的な管型反応器(PFR)に近く、高い転化率を得やすいです。しかしPFRと同様に、大きな発熱や吸熱を伴う反応では、触媒層内に温度分布が生じやすくなります。特に発熱反応では局所的な高温部(ホットスポット)が形成され、触媒の劣化や副反応を引き起こす危険性があります。
流動床反応器は、粉末状の触媒をガスの力で流動させ、あたかも液体のように振る舞わせる形式です。粒子が激しく混合されるため、反応器内の温度が均一になり、ホットスポットの形成を抑制できる利点があります。一方、ガスと触媒が混合しながら流れるため、ワンパスでの転化率は固定床に劣ります。さらに、触媒粒子同士の衝突による摩耗や、流動状態を保つために操作条件範囲が狭いという課題もあります。
気液固触媒反応器の場合は、中心に触媒を充填(じゅうてん)し、下からガスを吹き込み、上から液を吹きかけます。これにより対向流の形式で反応が進められます。もしくは液体で固体触媒を流動させた状態で、下からガスを吹き込むことで流動床として反応できます。流動方式には、下から連続的に液体を供給する方法以外にも、張り込んだ液体を撹拌(かくはん)することで分散させる方法もあります。
今回は、不均一系触媒反応の基本となる機構や装置について解説しました。どんなに優れた触媒を開発しても、拡散律速に陥ってはその能力を発揮できません。どんなに活性の高い触媒でも、反応熱を除去できなければすぐに劣化してしまいます。運用での性能維持も考慮して、触媒、反応器、運転条件の最適な組み合わせを決める必要があります。
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実験室で成功した化学反応を工業規模で再現する難しさとは?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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