撹拌の役割と基本構成はじめての化学工学(8)(1/2 ページ)

撹拌は化学プロセスを安定/高効率に運転する上で不可欠な単位操作です。今回は撹拌の役割や装置構成について、そして撹拌翼の種類について解説します。

» 2025年06月25日 08時00分 公開
[かねまるMONOist]

主な撹拌の役割

 撹拌(かくはん)の役割は、「ムラをなくすこと」です。これによりプロセス全体を安定させます。液中に異なる濃度や温度の領域が残っていると、反応速度や生成物の品質が場所によって変わり、収率低下や副生成物の増加を招きます。さらに撹拌は、「固体粒子を液中に浮遊させ続ける」「気体を微細な気泡として分散させる」「高粘度物質の熱を素早く外へ逃がす」といった役割も同時に果たします。

 撹拌が扱う対象は「液‐液」「固‐液」「気‐液」の3つの代表的な系です。加えて高粘度液など物性値が極端なケースも含まれます。

 「液‐液系」では、2つの液相を均一に混合し、抽出や反応の効率を上げます。ただし、せん断をかけ過ぎると乳化が進んで抽出時の分離が難しくなります。これは撹拌機の先端(撹拌翼)の形状と回転数のバランスに左右されます。

 反対に、ドレッシングのように強制的にせん断を加えて均一な乳化液を作る場合もあります。層分離する反応の場合、片方の液を細かい液滴にして接触面積を大きくして反応性を向上させます。

 「固‐液系」では、粒子を液体に分散させたり溶解させたりします。液との比重差が大きい粉体は、静置すると沈降します。粒子が沈降せず、かつ組成ムラが生じないよう底部まで液の流れを作る必要があります。

 粉体が塊で溶けにくくなっている場合、分速数千回転のような高速回転で回して塊をほぐす使い方もあります。一方、結晶を析出させる晶析操作では、結晶が壊れない程度の緩やかな流れを保ちつつ、沈殿が生じない強さの調節が求められます。

 「気‐液系」では、液にガスを吸収させたり気体原料で反応させたりする用途が主となります。撹拌は気泡を分裂させて総表面積を増やす役割があります。しかし流れが弱いと気泡径が大きくなり、上昇速度が速まって溶解が追い付かなくなります。

 反対に流れが強すぎれば極小の気泡が互いに衝突して再凝集し、泡沫層が厚くなって液面からこぼれる危険があります。「気‐液系」は液中へ送り込まれたガスをいかに細かく長く留め、しかも過剰な発泡を抑えるかが課題になります。

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