AGCが米国関税の影響が少ないワケ、“量から価値へ”の効果も製造マネジメントニュース(1/3 ページ)

AGCは、2025年12月期第3四半期の連結業績を発表し、米国関税の影響が限定的である理由を説明した。また、オートモーティブ事業で推進する高付加価値化戦略の効果が明確に表れ始めたことを明かした。

» 2025年11月10日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 AGCは2025年11月5日、オンラインで記者会見を開き、2025年12月期第3四半期(2025年1月1日〜9月30日)の連結業績と組織改正を発表した。

大部分が地産地消で米国関税の影響は今後も少ない見通し

 2025年12月期第3四半期におけるAGCの連結業績の売上高は前年同期比1.4%減の1兆5121億円で、営業利益は0.9%増の948億円となった。親会社の所有者に帰属する当期純利益は395億円と前年同期の赤字から黒字に転じた。

2025年12月期第3四半期の連結業績 2025年12月期第3四半期の連結業績[クリックで拡大] 出所:AGC

 同決算のポイントは以下の通りだ。

 売上高では、自動車用ガラスの品種構成改善や価格施策の効果、パフォーマンスケミカルズの出数量増加や価格施策の効果、欧米における建築ガラスの価格施策の効果が増収要因となった。しかし、塩化ビニール樹脂の販売価格下落、極端紫外線(EUV)露光用フォトマスクブランクス、欧州における建築ガラスなどの出荷数量減少、2024年2月実施のロシア事業譲渡が減収に働いた。

 営業利益では、上記の増収要因に加え、ディスプレイなどの収益改善施策の効果発現や、前年同期に発生したロシア事業の譲渡に伴う関係会社の売却損とバイオ医薬品の製造受託(CDMO)事業の大規模減損損失の剥落などが、増益に貢献した。一方、原燃材料価格の上昇が減益の要因となった。

営業利益の増減要因分析 営業利益の増減要因分析[クリックで拡大] 出所:AGC
AGC 副社長執行役員 最高財務責任者(CFO)の宮地伸二氏 AGC 副社長執行役員 最高財務責任者(CFO)の宮地伸二氏

 米国の関税の影響に関して、AGC 副社長執行役員 最高財務責任者(CFO)の宮地伸二氏は「2025年12月期第3四半期の連結業績で大きな影響は出ていない。AGCの事業は大部分が地産地消で行われているため、現時点において今後大きな影響が出るとは想定していない」と話す。

 セグメント別では、オートモーティブセグメントの売上高は同2.8%増の3856億円で、営業利益は104.7%増の234億円となった。同セグメントでは、欧州で出荷数量が減少したが、日本での出荷数量増加に加え、品種構成の改善や価格政策の効果も奏功し、売上高は前年同期を上回った。

 宮地氏は「増益には売り値の改善が最も大きく貢献した。オートモーティブ事業で注力している高付加価値化戦略『Volume to Value(量から価値へ)』の成果が出ている。製品を高機能化し、それに見合った価格設定とコスト抑制を行っている」と語った。

オートモーティブセグメントの売上高と営業利益 オートモーティブセグメントの売上高と営業利益[クリックで拡大] 出所:AGC
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