AGCが米国関税の影響が少ないワケ、“量から価値へ”の効果も製造マネジメントニュース(3/3 ページ)

» 2025年11月10日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]
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最適解の導出を目的に統合

 AGCは2026年1月1日付で化学品カンパニー内とデジタル関連部門で組織改正を行うことも公表した。

 同社の化学品セグメントは現在、化学品カンパニーのもと、クロールアルカリ製品とウレタン製品を扱う基礎化学品(エッセンシャルケミカルズ)事業本部と、フッ素系製品を軸に展開する機能化学品(パフォーマンスケミカルズ)事業本部によって運営している。クロールアルカリとは、塩化ナトリウム水溶液を電気分解して製造される、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)や塩素、水素を製造する基礎化学工業プロセスを指す。

 今回、化学品セグメントの収益性向上と運営体制の効率化を目的に、化学品カンパニー内で組織改正を実施する。日本国内のクロールアルカリやウレタン製品事業と、主に日本に開発/製造機能を置く機能化学品事業を統合し、新たな戦略的ビジネスユニット(以下、SBU)として「インテグレイテッドケミカルズ事業本部」に再編する。

 日本国内のケミカルチェーンにおいて、上流の電解プロセスから下流の各種機能化学品まで一貫して運営することで、全体の最適化と収益性のさらなる向上を図る考えだ。

 さらに、東南アジア地域のクロールアルカリ事業については、独立したSBUとして位置付け、「エッセンシャルケミカルズ東南アジア事業本部」とする。これにより、同地域における収益の改善と事業の安定化に注力した取り組みを加速していく。

 宮地氏は「当社の化学品事業は、塩化ナトリウム水溶液を電気分解して製造される、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)や塩素、副産物を中心に製品を生産している。塩素を使用して塩素誘導品やウレタン製品、機能化学品を製造し、苛性ソーダはそのまま販売している。現状は、クロールアルカリ製品はエッセンシャルケミカルズ事業で、塩素を用いた機能化学品(フッ素系化学品)はパフォーマンスケミカルズ事業で、と分かれている」と述べた。

 その上で、「これらの製品は塩素を使用する点で共通している。しかし、苛性ソーダの必要量に応じて塩素の生産量が決まるケースもあり、パフォーマンスケミカルズ事業の製品の生産に影響を及ぼすこともあった。こういった場合には(需要と供給)のバランスをとって運営しなければならなかった。エッセンシャルケミカルズ事業本部とパフォーマンスケミカルズ事業本部の統合は、(苛性ソーダや塩素の生産量や展開などの)最適解を導き出すことを狙っている」と説明した。

化学品事業収益向上のための組織変更 化学品事業収益向上のための組織変更[クリックで拡大] 出所:AGC

 デジタル関連部門に関して、同社ではこれまで、IT部門とDX部門がそれぞれ独立した組織として機能しつつ、連携を図りながらデジタル領域の取り組みを推進してきた。IT分野では、情報システム部がデジタルインフラの構築/運営に加え、セキュリティ戦略の策定と実行を担い、DX分野では、デジタル・イノベーション推進部がデジタル技術を活用したビジネスプロセスの革新、生産性の向上/改善、さらにデジタル人財の育成に取り組んでいる。

 今回、従来以上にIT分野とDX分野の統合一体運営を推進するため、両分野の統括部署として「デジタル・イノベーション統括部」を新設する。AI(人工知能)をはじめとする多様なデジタル技術を活用し、製造、販売、開発、管理など事業活動全般の生産性向上を加速するとともに、戦略、技術、人財のシナジーを追求し、一貫したデジタル戦略によるデジタルソリューションとビジネスイノベーションを進める。

 加えて、情報システム部を「デジタルソリューション部」に、デジタル・イノベーション推進部を「ビジネスイノベーション部」に改称する。

生産性革新加速のための組織変更 生産性革新加速のための組織変更[クリックで拡大] 出所:AGC

 なお、2025年通期業績見通しに関しては前回発表を据え置いた。

2025年通期業績の見通し 2025年通期業績の見通し[クリックで拡大] 出所:AGC

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