AGCが米国関税の影響が少ないワケ、“量から価値へ”の効果も製造マネジメントニュース(2/3 ページ)

» 2025年11月10日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

中国企業の影響で化学品の市況は低迷

 電子セグメントの売上高は前年同期比2.7%減の2597億円で、営業利益は同1.1%減の360億円となった。同セグメントは主にディスプレイ事業と電子部材事業から成る。ディスプレイ事業では、液晶ディスプレイ用ガラス基板の出荷数量が増加し、売上高が前年同期を上回った。電子部材事業では、EUV露光用フォトマスクブランクスなどの出荷数量減少に加え、円高の影響も重なり、減収となった。

電子セグメントの売上高と営業利益 電子セグメントの売上高と営業利益[クリックで拡大] 出所:AGC

 化学品セグメントの売上高は同1.8%減の4313億円で、営業利益は定期設備修繕に伴う製造原価悪化などで同11.1%減の397億円を記録した。同セグメントはエッセンシャルケミカルズ事業とパフォーマンスケミカルズ事業で構成される。エッセンシャルケミカルズ事業は、塩化ビニール樹脂の販売価格が下落したことで、売上高は減収となった。パフォーマンスケミカルズ事業は、半導体と輸送機器向けのフッ素関連製品の出荷数量増加や販売価格の上昇が寄与し、売上高は前年同期を上回った。

化学品セグメントの売上高と営業利益 化学品セグメントの売上高と営業利益[クリックで拡大] 出所:AGC

 宮地氏は「(中国の企業が化学品の増産を行っている影響もあり)塩化ビニール樹脂を中心に化学品の市況は低迷している。価格が抑えられているため、生産設備の増設分だけ売上高と営業利益が伸びるイメージだ。中国の経済情勢や建設需要などを踏まえると、当面は市況が回復するまでこの状態が続くとみている」と指摘した。

 2025年4月21日に火災が発生した、グループ会社である京葉モノマーの塩化ビニールモノマー製造プラントの復旧については、「順調に復旧中だ。2025年のコスト増の要因となったが、2025年12月期第4四半期中に稼働を再開し、2026年度の増益につなげたい」とコメントした。

 建築ガラスセグメントの売上高は同2.7%減の3208億円で、営業利益は同28.3%減の100億円となった。同セグメントでは、欧米で価格政策の効果が見られたが、欧州での出荷数量減少に加え、前年2月にロシア事業を譲渡したことで、売上高が前年同期を下回った。アジアでは、インドネシアなどでの販売価格下落や出荷数量の減少により減収した。

建築ガラスセグメントの売上高と営業利益 建築ガラスセグメントの売上高と営業利益[クリックで拡大] 出所:AGC

 ライフサイエンスセグメントの売上高は同3.9%減の961億円で、営業利益は162億円の損失となった。同セグメントは、バイオ医薬品CDMO事業において増設設備の稼働開始などにより出荷が増加したが、前年同期に計上した受託案件精算に伴う一時収入の剥落や、米国ボルダー拠点で発生した生産不具合などの減収要因により、減収を記録した。

ライフイエンスセグメントの売上高と営業利益 ライフイエンスセグメントの売上高と営業利益[クリックで拡大] 出所:AGC
セグメント別業績の前年同期比較 セグメント別業績の前年同期比較[クリックで拡大] 出所:AGC

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