核融合発電の技術開発で日本がリード、最終実証装置の建設に着手材料技術(1/2 ページ)

Helical Fusionはヘリカル型核融合炉の重要部品「高温超伝導マグネット」の個別実証を完了した。この成果を踏まえて、最終実証装置「Helix HARUKA」の製作/建設に着手する。

» 2025年10月29日 06時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 Helical Fusionは2025年10月27日、東京都内とオンラインで記者会見を開き、ヘリカル型核融合炉の最終実証装置「Helix HARUKA」の製作/建設に着手すると発表した。

エネルギーを使えば使うほど、国内の“富”が海外に流出

Helical Fusion 代表取締役 CEOの田口昂哉氏 Helical Fusion 代表取締役 CEOの田口昂哉氏 出所:Helical Fusion

 日本のエネルギー自給率は15%で、米国や中国、ドイツに比べて低いという課題がある。Helical Fusion 代表取締役 CEOの田口昂哉氏は「エネルギーのほとんどを海外からの輸入に頼っている。われわれがエネルギーを使えば使うほど、国内の“富”が海外に流出している。だが、日本は石油や天然ガスといった地下資源に恵まれていない。この問題を技術で解消する方法が核融合発電だ。核融合発電を実現できれば、エネルギー自給率100%超を達成し、エネルギー供給国になれる可能性もある」と指摘する。

日本のエネルギー自給率の課題 日本のエネルギー自給率の課題[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion

 米国の調査会社のレポートによれば、2023年における国内外の電力需要市場の規模を約300兆円と推測しており、将来は自動車市場に相当するとみられている。

 核融合発電は、超高温かつ高密度の環境に水素同位体を閉じ込めることで生じる核融合反応で発生する大きなエネルギーを発電に活用する次世代型の発電方式となる。具体的には、三重水素や重水素を超高温かつ超高圧で加熱しプラズマ状態として双方の原子核を衝突させ合体させることで核融合反応を起こし中性子を発生させ、その中性子からブランケットを通して熱エネルギーを抽出し発電に利用する。

 Helical Fusionは、核融合研究所や京都大学などの技術基盤を基に、ヘリカル型核融合炉を用いた商用発電所を実用化する計画「Helix Program」を進めている。

商用発電所の3要件 商用発電所の3要件[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion

 ヘリカル型核融合炉は、ヘリカルコイル(高温超伝導コイル)、プラズマ、ポロイダルコイルなどから成り、1億℃の水素ガス(プラズマ)を閉じ込めるために複数のらせん状のヘリカルコイルを使うタイプを指す。トカマク型と比べてプラズマ性能は劣るものの、プラズマ保持時間が長く恒久的な稼働に適している。ヘリカルコイル自身をらせん状にすることで、電流が作る磁場を重畳(ちょうじょう)させて磁場を捻(ひね)る。このように、磁場の籠でプラズマを閉じ込める方法を「磁場閉じ込め方式」と呼ぶ。

商用核融合炉に適したヘリカル型核融合炉 商用核融合炉に適したヘリカル型核融合炉[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion

 高温超伝導コイルとは、超伝導技術を活用した強力な電磁石を、絶縁体を使用せずに製作したもので、複数の高温超伝導マグネットなどから成り、超伝導状態で通電すると磁場を発生する。

 同社は既に小型装置を用いてヘリカル型核融合炉の概念実証を完了している他、大型ヘリカル装置(LHD)によりプラズマ温度1億℃でプラズマ保持時間3000秒以上を達成している。残す大きな課題は、ヘリカル型核融合炉の重要部品「高温超伝導マグネット」と「ブランケット兼ダイバータ」の個別実証の完了だったが、今回の会見で高温超伝導マグネットの個別実証の完了も明かされた。

残す大きな課題は、ヘリカル型核融合炉の重要部品「高温超伝導マグネット」と「ブランケット兼ダイバータ」の個別実証の完了だったが、高温超伝導マグネットの個別実証は完了 残す大きな課題は、ヘリカル型核融合炉の重要部品「高温超伝導マグネット」と「ブランケット兼ダイバータ」の個別実証の完了だったが、高温超伝導マグネットの個別実証は完了[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion
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