帝人が低迷するアラミド事業で構造改革、400人超を削減製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

帝人は、次期中期経営計画に向けた取り組みとして、アラミド/炭素繊維事業のコスト構造改革を行うと発表した。アラミド事業では400人超の人員削減を計画していることも明かされた。

» 2025年11月13日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 帝人は2025年11月5日、オンラインで記者会見を開き、次期中期経営計画に向けた取り組みや2026年3月期第2四半期(2025年4月1日〜2025年9月30日、中間期)の連結業績や2025年度通期業績の見通しについて発表した。

筋肉質で強靭な生産体制の構築を目指す

 同社は次期中期経営計画に向けた取り組みとして「顧客近接型ビジネスモデル」を重点領域で実行する。顧客近接型ビジネスモデルは、単に製品や素材を販売する従来のビジネスモデルから脱却し、顧客が抱える課題やニーズを起点に、その解決に貢献する価値やサービスを提供することに重点を置いているという。

 帝人 代表取締役社長執行役員の内川哲茂氏は「顧客近接型ビジネスモデルの展開により高収益体質を取り戻す」と強調した。

 同ビジネスモデルでは「川下展開」「周辺取込」「業界再編」といった取り組みを行う。「川下展開」では注力市場で川下(最終製品に近い分野)に軸足を移行する。「周辺取込」ではM&Aなどを通じて扱う製品を増やす。「これにより、当社が展開している製品の周辺サービスやリサイクルの事業を広げる」(内川氏)。

 「業界再編」では経営資源の効率化や規模とシェアの拡大を行う。内川氏は「自社単独の素材や技術だけでは解決できない顧客の課題に対し、外部パートナー(競合他社を含む)との提携などを行うことで、スピーディーかつ包括的なソリューションを提供する」と述べた。

 また、外部環境の変化を踏まえてコスト構造の改革を実行し、アラミドや炭素繊維の事業で収益力強化を図る。

次期中期経営計画に向けた取り組み 次期中期経営計画に向けた取り組み[クリックで拡大] 出所:帝人

 アラミド事業では2022〜2023年度に、原料工場の火災や天然ガス価格高騰、労働力確保難、生産不調による製造数量の未達、一部マーケットシェアの逸失があった。これらに対して、火災からの復旧、安定供給体制の構築、マーケットシェアの奪回、先物予約による天然ガス変動リスクの低減を行うことでネガティブな要因から早期に回復した。

 2024〜2026年度には、低調な欧州経済の継続、北米通商政策に起因するユーロ高ドル安などの外部環境の変化、競合の生産能力拡大による需給バランスの軟化と価格下落圧力が起きている。これらに対して、抜本的コスト構造改革、生産体制の見直し、人員を含む固定費の削減を行うことで約150億円のコストをカットし、「筋肉質で強靭(きょうじん)な生産体制の構築」を行うという。

 内川氏は「固定費の削減に関して、400人超の人員削減を計画している。現在市場で需給が崩れているパラ系アラミド繊維『トワロン』に関係する人員を主に削減する見込みだ。これにより、素材のコモディティ化が進む領域での競争を避(さ)け、高付加価値が求められる用途に向けた製品に資源を集中する」と話す。

 これらの取り組みにより、「高付加価値領域への集中」「顧客ニーズを起点としたビジネスの創出(外部パートナーとの提携など)」「新たな市場の取り込み(海底ケーブル用途の拡大など)」を実現し、持続可能な収益モデルの確立を目指す考えだ。

アラミド事業における抜本的コスト構造改革の進捗状況 アラミド事業における抜本的コスト構造改革の進捗状況[クリックで拡大] 出所:帝人
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