化学プラントで用いられる反応装置は、その操作方式や構造によって異なる反応特性を示します。代表的な反応装置ごとに基本構造と特徴を解説します。
反応装置は、主にバッチ式の回分反応器(BR:Batch Reactor)、連続式の連続槽型反応器(CSTR: Continuous Stirred Tank Reactor)および管型反応器(PFR: Piston Flow Reactor)の3種類が用いられます。反応装置の種類については第4回「化学プロセスにおけるバッチ操作と連続操作の違い」でも簡単に触れています。
回分反応器は、原料を槽内に仕込み、一定時間反応させてから生成物を取り出す方式の反応器です。原料投入、反応、取り出しを順番に行います。一度の反応ごとに容器内の反応が完結するため、少量多品種の生産や試作に向いており柔軟性が高いという特徴があります。途中で原料を投入したり、撹拌/温度条件を変更したりするような操作も可能です。しかし大量生産には時間と手間がかかります。
回分反応は、系内の濃度や温度が時間と共に変化する非定常操作になります。反応終了後に全量を取り出すため、品質を工程ごとに管理しやすいという利点があります。反応の開始から終了までのセンサーデータや品質データを時間と共に記録することで、バッチ単位での詳細な品質管理が可能になります。
連続槽型反応器は、撹拌槽に原料を連続的に供給すると同時に生成物を連続的に取り出す方式の反応器です。撹拌により槽内は完全混合した状態になるよう運用します。そのため槽内の組成や温度は均一であり、出口も同じ状態です。条件を一定に保ったまま連続的に生成物を得られるため大量生産に適しています。
ただし反応物質が槽内ですぐに混合され、低い濃度になります。反応速度は一般に、原料濃度が濃いほど速くなります。同じ体積でも、次に紹介する管型反応器より反応が進みにくいという欠点があります。しかし、固体触媒の添加や反応中のスラリー(固形物を含む液)処理なども撹拌によって容易に行えます。反応中に固体生成物が出る系でも閉塞しにくいというメリットがあります。
管型反応器は、管の中を原料が流れていく間に反応が進行する方式の反応器です。理想的なモデルでは管の半径方向に濃度や温度ムラが無いとして考えます。この場合、後から来た流体が前の流体を押す機構となり、滞留時間が均一になります。効率の良い反応が可能であり、特に濃度が高い方が有利な反応では高い反応率/転化率が得られます。この反応器は一般的に、連続槽型反応器よりも装置体積を小さくできます。
大型の連続プロセスで高い生産効率を発揮しますが、長い配管や多数の触媒充填管など装置の設計が複雑になる傾向があります。また、管内で付着物が生じたり、固体が生成したりすると流路が閉塞しやすいため、反応中に固形物が出ない反応に適しています。
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